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鳥海山
林田 雅子

山行日 1978年7月22日~23日
メンバー (L)播磨(夫妻)、野田、桜井、真木、鈴木、庭野、山柴田、島田、林田

 東北の人々に親しまれている信仰の山、鳥海山に一度出掛けてみたいという願いが実現しました。メンバーは播磨さんをリーダーに総勢10人、山形在住の真木、鈴木さんも参加してちょっと変わった一行になりました。
 酒田からバスで鳥海山麓、湯ノ台へ向かいました。湯ノ台から尾根筋へ出るまでは草のはびこる中を歩いて行かねばなりませんでした。森林に入るとひんやりとした風が吹いてきました。森林限界を過ぎるとなだらかな草原が続き、滝ノ小屋までは足取りも軽くなりました。小屋の直ぐ傍には雪渓が残り、白糸の滝がゴウゴウと音を立てています。小屋から1時間ほど息を切らしながら八丁坂を登ると河原宿です、素晴らしい景色を見た瞬間、この地で一晩過ごそうということになりました。
 心字雪渓を背に一面のお花畑。雪解け水が静かな流れになって優しい音楽を奏でてくれます。草原の遥か彼方には錦雲が浮かび、夕暮れ時には茜色に変わっていきました。私たちは冷えたビールで乾杯をし合いました。
 今晩のメニューはカレーライスです。当番はこの私。カレー粉をふんだんに使い本場のカレーを作ってしまいました。つまり、インド人もびっくりするほどの辛口です。全員から避難を浴びました。特に山形のお二人には堪えたらしく、本場のカレーは鳥海にありとおしかりを受けました。紋次郎氏の好きなカレーはウドン粉がたっぷりと入っていてまろやかな味のもののようです。皆んな紋次郎氏のカレーの本場ガイドがインドではなく、渋谷の薄汚い店であったことを知り大笑い、本場の味とは何ぞやと話は尽きませんでした。播磨さんなどお腹を出して笑い転げる始末です。
 翌朝、河原宿を後にして雪渓を登り詰めると、やや急なあざみ坂へ出ました。鳥海あざみは残念ながら蕾のままです。ようやく外輪山である伏拝山に立つとすぐ目の前が鳥海新山、両側が日本海、東側が東北の山々と360度の展望でした。七高山から少々下ると大きな石が無造作に積み重なる山頂です。味気ない頂きですが眺めは最高です。薄雲の切れ間から庄内平野が見えます、あまりにも広くて空と海との区別がつきません。翼が生え小鳥になったような心境でした、山頂下の大物忌神社は鉾立から登ってきた人々で賑やかでした。荒々しい山頂から千蛇谷を越えていくとお花畑の広がる扇千森です、すぐ下には空がすっぽり抜けたような鳥海湖がブルーの水をたたえていました。下りは大勢の人を避けるようにしてバス停のある鉾立へ急ぎました。鳥海山での楽しく甘い思い出を大事にしながら。


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