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丹沢押出し沢
田原 宏史

山行日 1978年5月28日
メンバー (L)久山、小林、島田、田原

 7時の待ち合わせに新宿に着いたのは6時30分、コーヒーショップでジュース等を飲み、しばらくすると皆が現れた。
 江村君が紙袋を下げてきたのでオオッ差し入れかと思いきや、ヘルメットを持ってきてくれただけであった、残念!!最後に吹っ飛んできたのは、かの有名な島田さんである。昨日は遅かったということであるが、何で遅かったかは遂に聞かずじまいである。
 電車のドアが開くなりドタドタと床を占領するその凄まじさ、他を圧倒する。
 ひとしきり寝ると新松田である。駅を出ると何となくさあこれから山だぞという気を起こさせる。今日のパートナーは久山リーダーのもと、小林、島田、そして私の4人である。バスの終点から中川川を渡り15分ほどで押出し沢の出合に着く。軽く腹に入れてルートを左岸にとり堰堤を4ヶ所ばかり越すといよいよ取付きである。ヘルメットを被り、久山リーダーと島田さんは地下足袋、草鞋で小林と私は登山靴のままである。
 沢登りを長いことしていないのにつま先の擦り減って金釘の飛び出した登山靴で苔むした滑りやすい沢を登るなんて随分とご立派なことである。案の定、皆んなは涼しい顔で登っているのに私ときたら息づかいは激しく腰はふらつき全制動よろしく膝から何から体中でフリクションを利かしての登攀である。いや、登攀なんて格好の良いものではない。
 かろうじて這い上がっているだけ、しかし島田さんの登りっぷりの良いのには舌を巻くほどである。我々男どもより度胸があります。
 中間の堰堤で小休止の後、後半に向けて足を踏み出す。膝まで濡れながら自分にとっては大変恐ろしい滝を2~3越えると、行く手に現れたデッカイ滝、もう目の前が真っ暗になってしまう。久山リーダーは元気いっぱい「ヨーシ登るぞ」と大きな声で掛け声をかけてくれた。
 しかし、残念なことに直登は無理であった。右手から左岸上部のブッシュ帯に逃げ込むことに決め、先ず久山リーダーがスルスルと登り25mほど上からザイルを落とし、小林、島田さんに続き私が最後にヘッピリ腰でようやく登り切り、ここが一応終了点となる。ザイルをまとめブッシュの中を上へ上へと登る。
 行く手が涸れ沢になった所で下山開始となる。ビールに餃子と心の中で繰り返し叫びながらバス停に向けて駆け下る。今回もまたいつもの恐ろしいメンバーで登ってきたが時間的に短い沢登りだったので体力的には楽だった。帰りには新松田でビールを飲み、そして新宿で別れ際に再びビールで乾杯である。
 本当に楽しい山行であった。ベルクハイル!!


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