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夏山合宿 剱岳
稲田 竹志

山行日 1978年8月5日~8日
メンバー (L)久山、佐藤(孝)、田原、稲田、鍵山、村瀬、須貝、野本

8月5日 源次郎Ⅱ峰Dフェース
 「オエッ!!本当にこれ登るんかい、すげえ所に来てしまった、北岳のバットレスよりシビアに見えるよ、まったく」
 思えば1週間前、三ツ峠に練習に行った時も自分の度胸のなさを感じたが、今回もやはり同じだ。所帯持ちはダメだ(これ言い訳)。絶壁の這松を漕いで取付きよりトップは田原さん、ミッテル稲田、ラスト須貝の順で登る。1ピッチ目の田原さんの位置に僕が着く、田原さんは続いてルートを先に伸ばすためまた10mほど登ったが、その先はかなり状態が悪く人工登攀の連続になりそうだ。「オーイ!!ビナ足りないよ、持って上がってくれ」と田原さんが指示する。ラストの須貝君に登ってもらう。僕は同じ位置に同じ体勢で1時間も確保していたのでくたびれてきたが、それ以上に不安定な姿勢でルート工作をしているトップはもっと大変だった。田原さんの体調が優れず結局1ピッチで断念し下降した。僕の技術では全く自信がなかったので内心ホッとした。

8月6日 八ツ峰Ⅵ峰Aフェース
 今日は須貝君と二人でⅥ峰のCフェースを予定していたが、かなり混んでいて順番待ちになりそうなのでAフェースに変更する。高度差100m以上3ピッチのⅢ級ルートだが高度感が素晴らしく足元の遥か下に見える長次郎雪渓を登って来る登山者の顔が見えないほど。1ピッチ目で須貝君の確保をしながら長次郎雪渓を登ってくるはずの鍵山さん達が現れないか目を凝らすが残念ながら見逃したようだ。Aフェースカンテ沿いのルートは長次郎雪渓の空間にグーンとせり出し、空中散歩のような気分で目前に広がる日本離れした八ツ峰の岩場が素晴らしい。2ピッチ目で二人並んで岩にへばり付いてタバコに火を点ける、やがてピークに着き快い剱の展望に浸って下降した。今日の感想はとても良かったの一言に尽きるが、自分の反省点としては岩登りは気を締めて、やはりそれなりに練習しておかなければいけませんね。
 登攀終了して緊張した気持ちがほぐれて雪渓で大休止を取り、雪解け水をガバガバ飲む(二人共飲水を忘れた)。後は行き掛けの駄賃とばかり剱のピークを踏んでまたダラダラ下ってきた。


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