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愛鷹山
稲田 竹志

山行日 1979年1月18日
メンバー (L)稲田、島田、林田、田代、中山、鈴木(一)

 「こんなハズではなかった」と思うことはちょくちょくあるものでございます。この愛鷹山もその一つでありまして、参加者にはご迷惑をかけました。しかし、それも登山の面白い要素のうちと考えてもらいましょう。係を受けた僕が資料としたものは山行記録が三つとガイドブック二つに例のビニール製の地図のコースタイムの入った「富士山」でした。それによると我々のコースは全くの一般ルートで頑張れば充分縦走できると軽く考えていたんだが、いざ行ってみたら意外と時間はくうし冬の沢登りになってしまった。
 東海道線の吉原駅で朝7時に鈴木(一)さんと待ち合わせ、岳南鉄道の須津駅で歩き始めた男二人と女性四人の我々パーティ、1時間半も林道歩いたら全員アプローチ歩きに嫌気が差してきて、トラックでも来ないかなあーという雰囲気になってきた。一休みしているところへマイクロバスのような車がこっちへ向かってくる。「それチャンス!!」誰言うともなく女性のお色気作戦が展開。先ず手を振り、それから投げキッスの連発、男は目立たぬ所でうまくいくかなと期待しながらも事の成り行きを見つめる。案の定、スケベ野郎の車はちゃんと止まってくれたね。これで須津山荘までは大分助かることになった。何でもこのおっさん、猪を撃ちにきた猟師で、先日は北海道で熊や猪を撃ち3ヶ月で800万円も稼いできたそうな。スゲェ話もあったもんだと感心した。そう言えばこの車の背中には猟犬がいるらしくゴソゴソ動いている音がする。
 山荘からは粉雪の舞う中を割石峠へ向かう。峠までは登山道らしき道はほとんどなく沢に沿った踏み跡を辿るだけで、鋸ルンゼ出合まではケルンやペンキの目印はあるがとても一般ルートとは言い難い。割石ルンゼも沢登りの感じで安易にこのルートを行くのは危険と思うが、ガイドブックや道標にはそのような表示はなかった。
 チムニー状のルンゼではザイルを使い、時間はどんどん過ぎていく。今登ってきた麓の方からはモーレツなガスが立ち込めてきた。「縦走は無理だから引き返そうか」「ここまで来たんだから峠まで登ろうッ....」てな具合でやっと割石峠へ出た。峠というからにはもうちょっとマシな道の出合った鞍部の所かと思ったが。
 時間がないので縦走は諦め、反対の越前岳を経由して須山を目指す。霧氷の山頂へ幻想的な中を歩く。気温はマイナス7度とある。須山へ着いたら気のいいドライブインのおばさんに大変なもてなしを受け、最高に御機嫌な満足感に浸り我々は小田急ロマンスカーで帰途につく。


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