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冬山に遊ぶ
渡辺 稔

山行日 1978年12月17日
メンバー (L)久山、江村(真)、須貝、浅野、瀬村、伊藤、島田、鍵山、田代、鈴木(隆)、(以下は日帰り組)稲田、播磨、田原、江村(皦)、渡辺、佐藤、林田、山柴田、中山、野田、桜井

 誌上を借りて皆様に「始めまして」の挨拶を申し上げます。三峰山岳会に入会して3度目の山行、夜行日帰りの谷川岳へご一緒させていただきました。
 12月16日、21時30分上野駅集合、皆さん続々と集合し総勢14名、1泊組を合わせると合計22名という大パーティとなる。汽車の中は戦後の混乱もかくやと思われるほどの混雑、眠るどころか座ることさへ出来ぬ有様、2時半土合駅着。
 国境の長いトンネルを途中から降り、またまた長いトンネルの階段を登ると土合の駅であった。期待と感激を胸に秘めて「さあ」と支度する皆の手早さ、皆の顔に美しく映える月の光、白い息、靴の音も勇ましく歩く山男、雪女、15分ほどで黒い土と別れ、いよいよ雪の尾根へ入る。谷の向こうにもライトの光、三つ、四つ、七つ、「綺麗ねー、素敵だわー」という囁き。そして「焼き芋ー」の声、この頃から月は雲の上に隠れ始めた。そこで軽く腹ごしらえ、やがて月の光はなくなりライトだけが頼みの光、しかし、間もなく夜明けの歌が空に広がり天神平スキー場の方から何やら物音が聞こえ始める。やがて6時30分、約束の時間である最初であり最後になった、そして全くロマンの感じられない交信の時間である。
 「こちら只今天神尾根を登り始めたところ、後2時間ほどでそちらへ着けそうです、どうぞ」、「リョーカイ、こちらは今、メシの支度をしているところです、どうぞ」夢がありますか?、ロマンが感じられますか?この交信が最初で最後、その訳は何を隠そうその時既にテントまで15分くらいの所まで登っていたのです。
 立派な避難小屋へ入り、温かいお茶を飲みながら食事、慎ましい食事ではありましたが(中には豪華な人も)、その美味しいこと、時の経つのがあっという間でした、その間に1泊組はテントを撤収。
 冬山について色々聞き、アイゼンの付け方、ピッケルの使い方などを聞き、いよいよ実地訓練、訓練には違いなのだが雪の上を滑る楽しさは子供の頃を思い出させてくれました。14時下山。
 リュックを背負いカッコ良く滑り降りる若者、尻餅をつく紳士淑女、1時間ほどで土合に着いてしまいました。
 時間も早いし腹も空いているので、全員水上で鍋焼きうどんを食し、かつチョーチョーの薬(酒)を少々、帰りの汽車は全員ゆっくり座り、賑やかに友情を温めてきました。雪が少なく気温も高くまるで春山を思わせるような山行でした。そして何より大勢が出席できたことがこんなに楽しい山行になったのだと思います。
 ついでに自己紹介を少々、渡辺稔30才、独身、秋田市出身、山歴10年、実質4年。ほとんどが単独、読書と自然を愛し、女性に見放され寂しく指をくわえる二枚目(5年前はもてたのに)、温かく迎えてくれた三峰の皆さんありがとう、これからもよろしくお願いいたします。


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