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杓子山~石割山
播磨 忠志

山行日 1979年5月13日
メンバー (L)播磨、鈴木(一)、江村(皦)、広瀬、播磨、その他1名

 5月にしては大変冷え込んだ朝であった。富士吉田駅から追い出された我々は駅前のコンクリートの上で仮眠していたが夜が白々と明ける頃、あまりの寒さで眠っていることも叶わず駅前の工事現場で釣り人がしていた焚き火にあたらせてもらう。運よく通りかかったタクシーを拾って不動温泉の手前まで入る。不動温泉は意外と立派な佇まいで朝靄の中に建っていた。不動温泉から林道は沢から離れ山腹を絡んでつづら折れで高度を稼ぐ。新緑はちょうど今が盛りでウグイスの鳴き声を聞きながら順調に歩を進める、登るにつれて背後には驚くばかりに大きく、まだ真っ白な雪化粧をしたままの富士山がせり上がってくる。
 時間はたっぷりあるし、天気もまあまあだし、のんびりムードで道端のウド等を採りながらまた、時々山腹に見られるツツジの花を愛でながら春の山を満喫する。
 ところが大分登って林道が終わりに近づき沢へ再び近づいた所で大変なポカに気がつく。不動温泉の辺りであんなに勢い良く流れていた不動沢がこの辺りでは伏流になり全く水のない涸れ沢になっていた。下まで降りて水を汲んでくるのも面倒なので本日は夏みかん5個と広瀬さんの持ってきたお茶(水筒に半分くらい)で強行することになってしまった。幸いと言おうか朝が寒かったせいかまた、天気の変わり目にきて高曇りだったせいかあまり喉が渇くこともなく第1目標の杓子山へ到着、何と言っても富士山の雄大な展望に圧倒される。私は隣りの三ツ峠よりもこちらの杓子山の方が富士を見るのには良いと思う。杓子山は三ツ峠みたいな喧騒がないし自然も色濃く残っている。静かな気持ちで富士山と対峙できるのが何と言っても好ましい。
 杓子山と鹿留山の間も登山客が少ないせいか自然が荒らされてなく、江村さんにユキザサなる山菜を教えてもらい、またキヌガサ草などを見ながら文字通りの道草を食いながらのんびりと歩く。鹿留山では杓子山とは違い全く展望は得られないが原生林の中の静かな山頂で一時を過ごした。
 鹿留山から内野峠までは岩場も混じえた急な下りで夏は草いきれでムンムンしそうな草原を横切り曲沢峠、二十曲峠とやり過ごし最後のひと登りで本日の最終目的地の石割山に到着する。杓子山、鹿留山と違い石割山は山中湖に近く登山者も多いせいか大変荒れていてあまり感じの良い所ではなかった。ここまで来ると水分の欠乏も頂点に達し、平野でのビールを楽しみに一気に駆け降りた。


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