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十文字越え
林田 雅子

山行日 1979年3月24日~25日
メンバー (L)浅野、久山、須貝、島田、麻生、林田

 悪天候が予想されていましたが私たち6人は甲武信岳、雁坂峠を目指し梓山を出発しました。唐松の美しい毛木平を抜け沢沿いに柔らかくなった雪道を踏みしめて行くと八丁坂に出ました。急坂から開放されると十文字山の稜線です。春の陽射しをたっぷり受けながらなだらかな道を歩くと十文字峠は直ぐそこでした。私は峠より十文字小屋を見ることを楽しみにしていました。期待していたように深い木立の中に赤屋根の立派な丸太小屋が建っており、木こりが住んでいそうな小屋でした。小屋で少々休憩し、今日は三宝山か甲武信小屋ぐらいまで行こうということで、アイゼンを付け大山まで登ったのですが、天候は荒れ模様になり小石混じりの風に行く手を遮られてしまいました。しかたなく小屋へ戻りドラム缶ストーブに薪をどんどんくべ、麻生さんの歓迎会という名目で宴会になりました。午後3時から夜更けまで歌い、騒いだのですから想像がつきましょう。リーダー浅野さんの「遥かな友に」久山さんの「山の子の歌」、須貝さんの「シャローム」島田さんの「南部牛追唄」、そして私の変ホ長調(狂った)の歌とそれぞれが得意とする曲を披露しました。外は風、雨ともに強く天気予報では東シナ海と中国地方に低気圧があり、東へ進んでいるとのことでしたから予定を変更して良かったと思います。
 翌日は穏やかな天気に恵まれ赤沢山、白泰山を越え栃本へ出るコースを選びました。峠は原生林の深い緑と雪の色が調和し、一里ごとに観音様を眺めながらの情緒ある山路です。北側の斜面は春とは言え残雪が多く、幾度も足を取られました。けれども新緑の木々の間からは甲武信岳、破風山、雁坂峠への山並みが見えます。以前、里人たちが佐久から秩父へ行くのに随分使ったのだろうと思うと不思議と私自身も里人の心境になってくるのです。二里観音の近くには白泰避難小屋があり、前の覗岩は雁坂峠と向かい合っています。栃本に着くと運良く秩父湖までトラックに乗せてもらいました。秩父は桜が満開でしたから荷台でお花見気分を味わうことができました。

〈コースタイム〉
3月24日 毛木平(8:25) → 八丁坂 → 十文字小屋(10:20~11:00) → 大山(12:00) → 十文字小屋(13:00)(泊り)
3月25日 小屋 → 旧十文字小屋 → 三里観音 → 二里観音(12:40~13:00) → 一里観音 → 栃本着(15:30)

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