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おくむさし漫歩・蕨山
小堤 正雄

 齢も既に六十路を超すと往年の高山、谷歩きなど思いもよらない。もっぱら低山逍遥の昨今である。所謂奥武蔵では高さについては武甲山が一番であるが、奥深い点ではこの蕨山の方が深いのではないだろうかと私は思う。数ある奥武蔵のコースの中で割合静かな山行のできる山である。どのガイドブックにも載っているこの山の、今更紀行文でもないがこれは或る日の覚書である。7時15分の西武秩父発のハイキング急行に乗ると折よく名郷行きのバスに接続する。河又まで50分、名栗川の奥へ入るわけだ。
 以前はバス停の左側の広場から入ったが、今日はちょっとバス道を行って今度できた有馬橋を渡る、有馬林道は工事中のため未だ通れない。しかし、この新道かな?お寺を過ぎて右の墓場の所から山径にかかる。以前は有馬林道を小1時間、右に有馬小屋から登ったが今は通れない。左も最初の大ヨケの頭までの4、50分の急登は結構きつい。緩い登りを繰り返し鳥居を二つ程潜り右手に神社に出る。河又から1時間程で一服にちょうど良い所だ。大した登りもなくやはり小1時間程で有馬小屋から登ってくる大ヨケの頭へ着く。ここまで来れば後は大した登りもなく明るい快適な尾根道だ。右手になだらかな奥武蔵高原が連なる。次の頭が藤棚山だ。ちょうど昼飯頃だ。あまり展望が良くないので早々と出発する。やがて川苔山辺りが見え出すともう蕨山も近い。一登りして1033mの山頂に立つ。大して広くない山頂だがその割に人影も少なく一服にもってこいだ。ちょうど絶好の日和でサンシャインまで望見できた。この時ちょうど秋だったので大持山の紅葉が美しかったと山日記に書いてあった。一通り展望を楽しんで下山にかかる。今日は時間があるので鳥首峠まで回るつもりだ。名郷への急降の道を右に分け下だっていけば逆川乗越しの平坦部に出る。左に逆川林道がよく見える。いよいよ有馬山岐へ橋小屋ノ頭への急登だ。20分程だが少々きつい。漸く頭へ取り付いてホッとする。立派な道標があるが右へ鳥首峠方面は書いてあるが、左へ有馬山岐中心部の方へは書いていない。まだヤブが相当に酷いのかな、右へ次の頭羽バミ(1071m)へ出ればもう今日の山行も終りに近い。頂上を一気に駆け下りて右へ鋭角に折れて送電線の下に出れば鳥首峠だ。一度は訪れてみたい静かな峠だ。ここからは白岩の石灰岩の工場を経て名郷のバス停まで1時間ちょっとの道のりだが幾山坂越えてきた身にはボツボツ疲れも出てこよう。大場戸橋を渡り左から左からの妻坂峠からの道を合わせればもうバス停まで15分である。その頃は名郷発飯能行きのバスの時刻が41分毎の1時間に1本だったが、その後行った時に雨に降られて有馬小屋に寄った時、時刻表があって14:38、15:51、16:58と書いてあったが、とにかく1時間に1本であるからそれに合わせて行動を取ることが肝要である。歩行時間、5~6時間程度の私にはちょうど良い漫歩コースである。


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