トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ241号目次

夏山合宿第一・悠久の朝日連峰
広瀬 昭男

山行日 1980年7月26日~29日
メンバー (L)広瀬、遊佐、中村、田代、岡部、村山

 朝日連峰に登る機会を逸してから既に6年の歳月が過ぎた。月日は移り変わり6才年をとった。いつか登ろうと思いつつ今日に至ってしまっている。当時は熊防御対策などを真剣に考えたりしたこともある。
 7月26日、晴れ後曇り。黒渕小屋より3時間で大鳥小屋に着く。まだ夜行の眠気も覚めぬというのに出足は好調だ。予想以上に大勢のキャンパーで賑わっていて大鳥池に対するイメージも一挙に覆されてしまう。だが、三角池の静寂さは我が傷心を癒すには十分であった。
 7月27日、雨。人数に対する天幕の準備が不十分のため各人に迷惑をかけ、リーダーとして反省しております。何と田代さんは雨具を着て登山靴を履きツェルトで大雨の一晩を過ごしたのです。
 降り止まぬ大雨で行動できず、しばし天幕内でテルテル坊主製作に精を出す。予定より大幅に出発時間が遅れてしまう。
 三角峰からの俯瞰には大鳥池が波静かに潜んでいる。女性軍ちんまりとカメラに収まる。以東岳直下、全員空腹のためペースが落ちてきた。腹が減っては山は登れぬ。山の神は腹を減らした狼達、いや登山者に対し「喘ぎ」という軽罰を加える。
 狐穴小屋に着き天幕場を探している間に雷雨となり急いで小屋に逃げ込んだ。薄暗くとも安堵感で肩の荷が下りる。
 7月28日、雨後晴れ。霧に包まれた狐穴小屋。ローソクを灯しホエーブスの燃焼音が小屋の中を駆け巡る。夏だというのに寒い。皆、それぞれ雨具で身を守って出発。何故か今朝は調子が悪い。あまり好きでない「力うどん」を食べたためか、いや違う。飲料用液体燃料が少ないからだろう。竜門小屋を過ぎるとエンジン始動する。
 金玉水を越すと待望の大朝日小屋です。昼食後、大朝日岳アタック。何と久し振りにお天道様とご対面。お見合いなのです。しかし、我々の辿ってきた長い道程はベールに包まれたままでした。
 大朝日岳に対峙して小朝日岳が我々の行く手に聳えている。皆さん登らないと思っていたらしい。急登に次ぐ急登で顎を出す。しっかりコースを把握しておかないから山に欺かれるのです。振り返れば大朝日岳は雲に包まれ山頂は見えません。朝日岳の斜面には自然界の創作したY字雪渓が今にも崩れ落ちんばかりに残っている。
 遂に熊出没!熊五郎君コンニチワ。鳥原山での出来事です。我々の人相に恐れをなしてか、鳴き声だけで姿は確認できず。果たして本当に熊だったのか。しかし、下界に近づくにつれて熊との遭遇率は高くなるので挨拶ぐらいしに来てもよさそうだが。
 朝日連峰縦走も鳥原山を過ぎると温泉が間近である。3日間の汗と疲れを早く拭いたい。冷たいビールが我らの咽を潤すのも時間の問題だ。午後5時20分頃、朝日鉱泉に着く。無事に合宿を終えて心地よい疲労感とともに話に花が咲く。

〈コースタイム〉
7月26日 黒渕小屋(9:00) → 大鳥池(12:15)
7月27日 大鳥池(7:10) → 狐穴小屋(14:30)
7月28日 狐穴小屋(4:45) → 大朝日岳(12:30) → 朝日鉱泉(17:20)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ241号目次