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白馬岳
遊佐 勝見

山行日 1980年5月24日~25日
メンバー (L)播磨、川田、江村(真)、江村(皦)、田原、広瀬、遊佐、島田、村山

 白馬岳には過去に何回か登ったことがあるが春夏秋冬とそれぞれ違った味わいがあって趣のある山である。特に残雪期に白馬岳への山稜などをスキーで滑る壮快な感じは忘れがたい。
 さて今回は前夜よりマイクロバスで東京を発ち、夜中に白馬大池駅に着いたので朝方まで3~4時間眠り、それから白馬スキー場の方へと車を進めた。スキー場を過ぎた頃から凸凹のひどい悪路となり、後部に乗っていた私達は必死で周りの枠などに掴まっていたがあまりに揺れが激しく疲労困憊し、もう耐えられないと思った頃やっと栂池小屋に着いた。
 しばらく休養と朝食後、いくぶん眠気もしたがやっと体力も回復し8時30分頃、乗鞍岳方面に登り始めた。幸い天気は良いがスキーを背負った荷は重く足取りはあまり順調ではない。天狗原を越すといよいよ乗鞍岳の斜面にかかる。帰りは快適に滑り降りられるだろうと夢見つつ我慢しながら雪の斜面を登る。更に少しの登りで乗鞍岳に着き、腹を壊すのを心配しながら即席のミルクアイスをがつがつ食べた。一服後、なだらかな路を辿って白馬大池の近くに到着した。
 午後はスキーを担いで雷鳥坂への斜面を登り思い思いに滑り降りる。天幕の中にいる人々は斜面を見上げながら滑り降りる山スキー屋の品定めをしている。どういう訳か上手い人よりも初心者が滑り降りた方が拍手が多い。とにかくシーズン最後のスキーを満喫できて楽しい一日でした。
 翌朝、白馬岳頂上を目指して登山開始。大雪渓を滑り降りる予定の方々4人はスキーを担いでいる。ベテランの方ばかりだがさぞかし重いだろうし、荷が重い等と不平も言わず登らなければならないのだから登山とは辛いものらしい。ルートは夏道沿いにとり小蓮華山~三国境を越して続く登路を黙々と登る。三国境を過ぎると若干狭い稜線となり雪の少ない稜線を登り続けると次第になだらかな路となりやがて頂上に着いた。丁度8時であった。頂上から信州側の断崖を覗いたり、連なっている残雪の北アルプスの山々を眺めながら山名を確認したり、果物を食べたりして30分ゆったり過ごした後、頂上を二手に分かれて出発することになった。
 スキー組は4名、白馬大池に往路を戻るのは5名、お互いに安全に降りられますようにと言い含めながら頂上を出発し、僕らは往路を戻る組に入った。危ぶまれた天気もそれほど悪くならずに済みそうだ。頂上付近を時々振り返りながらどんどん稜線を下ったが雪が少なくてスキーで降りる楽しみがなかったのが残念だ。10時過ぎ白馬大池についてテントを撤収し出発準備を整えた頃から急にガスってきて視界がなくなってしまった。この辺は平らな感じだから雪が残っているとルートの取り方がかなり難しい。
 慎重に降りようということで先ず大池を若干廻り込んでから乗鞍岳に向かい、露出した夏道を見つけてその道を辿り、乗鞍岳の下りにかかる地点の雪面に出た。ここで三人はスキーを履き二人は歩いて降りることにした。視界が悪いので10m以上は離れないように注意しながら雪面を下り始めるとやがて急な乗鞍の大斜面に出た。スキーで横滑りを繰り返しながらゆっくりと15分ぐらい降りると斜面は緩やかになりそのまま数百メートル進んだ。ところが天狗原にあるべき「ほこら」を見失ってしまった。あちらこちら歩き回っても現在地の確認は難しいのでリーダーだけがあちらこちら歩き回って3~40分後ようやく現地点を確認できた。もっとも天幕は持っていたし食料も十分残っていたので少しくらい遅くなってものんびりルートを探せばよいという安堵感はあったが。いずれにしてもこの辺は特に冬はルートを見失って遭難しやすい所である。結局、少し下だってから左に大きくトラバース気味に辿って栂池小屋が見える所に出た。そこからは樹林の中を潜るように滑走し最後に林の中の雪面を横滑りを繰り返して降りると自動車道路に出た。樹林帯の中を滑る時は決して格好良く滑れないが、歩いて下るように単調でなく下り方に変化があって楽しい。どんなふうに降りようとゲレンデと違って大自然の山を滑ることは格別の感触があって痛快だ。
 自動車道路からは例のマイクロバスで悪路を下り、白馬スキー場から待ち合わせの信濃四ッ谷に向かった。大雪渓組との待ち合わせで行き違いがあって、また1時間、時間をロスしてしまった。マイクロバスで帰路につく頃、雨が降り出した。また、東京に着くのもかなり遅くなってしまった。しかし、山と仲間の感触が清々しく蘇るような楽しい山行でした。


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