トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ242号目次

南会津の山旅
鈴木 一利

山行日 1980年10月10日~12日
メンバー (L)野田、鈴木(一)、鈴木(嶽)

 今回で三度目の南会津の山旅。第1日目は上三寄駅より大戸山~大戸岳へ登り駅に戻ってくる予定。文献によるとこの大戸岳の山開きには会津若松市長も参加し盛大に行われたと記されているが、部落を抜けてから地図を頼りの登山口探し。登山口を見つけ歩き出すと朽ちた道標がぽつりと現れ行く手を示す。途中あまりはっきりしない道を大戸山へ栗拾いしながら歩く。尾根の雑木の間から垣間見る山々の紅葉は今が盛りの素晴らしさ。大戸山の手前の避難小屋はもう荒れ放題。小屋と言っても2~3人用の屋根形ツェルトくらいの広さのものであった。この大戸山を少し行くと大戸岳まで背丈以上もある根曲竹とヤブがありその中を大戸岳へと向かう。
 一等三角点の大戸岳の展望は良く、辺りの風景を満喫して闇川へ下る。この闇川へはルートもしっかりしており人が入っているようである。部落では稲架けの真っ最中。酒屋を見つけてビールを飲み、アイスを食べて上三寄駅まで歩く。駅では朝、荷物を預かっていただいたお礼のメモを残し、パッキングし直しバスで会津若松まで。志津倉山~博士山へ登るため只見線に乗り換える。会津宮下まで行く予定が電車がなく、会津坂下まで行き博士山から登ることにした。バスの時刻がわからないので急ぎ町の方へ行くと運良くバスが来たので乗り込む、何とこれが最終バスであった。
 私達を乗せたバスはだんだん闇の中へ包まれていく。終点の大成沢までいき、私達の他に二人しかいない。終点のバス停では琵琶首村営のマイクロバスが停まっていた。
 二人の客はマイクロバスに乗り込み、私達はそれを見送りバス停脇の酒屋に入って酒を仕入れ脇の道を歩き出す。もう時計は6時40分を過ぎている。5分ほど歩いて道の脇にテントを広げる。
 翌朝、道なりに進んで行くうち三人の山屋に会う、今回の山行で会った唯一の山屋たちである。間もなく道は二筋に分かれる。
 コースを道海泣き尾根にとる。このコースは昔、博士山近洞寺があった頃、住職の道海があまりの急峻に泣きながら登り下りしたのでその名が付けられたと言われている。
 この急登を2時間も登り詰めると大谷滝尾根との道と合流する。ここで一本である。後は大した登りもなく僅かな時間で博士山である。会津の山々の展望を山頂から充分楽しみ、大谷滝尾根を下り大成沢へ下る分岐を左に折れ大谷滝沢へと下り志津倉山を目指す。大谷滝沢へ下ると林道工事が行われていて出入沢峠への道がわからず、林道を登り途中から地図にでている出入沢峠の場所を見当つける。後はヤブをこいで下るだけ。
 そうこうするうち出入沢峠の道標も見つかり居平の部落に着く。何と部落に着くと目の前に昨夜の村営マイクロバスの車庫があり、その出た所が酒屋(と言うよりよろず屋)の庭先。すぐビールを買い庭で飲み干しながら、下りながら食べた山の実やきのこ談義をしていると店のおかみさんが煮たてのきのこをくれる(名前はわからず)。
 その上、志津倉山への登山口について聞くと丁寧にも地図まで書いて教えてくれる。志津倉山の取付きの入道沢まで行く。途中道を間違えて山仕事の人が小沢を挟んだ山の斜面から林道を行くというようなことを言っていたが入道沢の登山口道標を見つけた。ルートの偵察に鈴木(嶽)さんがジャンケンに負けて行っている間に私と野田さんでテントを張る。
 偵察の結果は猛烈なヤブで無理とのこと、ルート変更を決め、さっきいただいたきのこで一杯やり眠りにつく、小雨がシトシトとテントを濡らす。
 翌朝、少し雨が残っていたが県道へ出る頃は止み、琵琶首林道(まだ工事中)を通って横曽根峠へ出る。峠から見てもこの地がなぜ琵琶首という名がつけられたのか地形的にもピンとこない。
 峠のすぐ左手から登る。ヤブの尾根筋を登り詰めると志津倉山本峰に出る。本峰には地図にもない踏み跡もある。根曲竹をかいくぐるようにして志津倉山(大辺山)に出る。
 今日は今までと違って展望はない。雨合羽を着てのヤブこぎも大辺山ではもう心配ない。ブナ平まで戻り大沢まで下る。途中の雨乞岩分岐の脇沢に30~40メートルはあろうかと思われるナメが見事にあった。程なくして林道に出る。30分も歩くと入間方部落に出る。
 三人でお土産に林道脇のアケビを袋にいっぱい採りながら入間方の部落へ。後は電話してタクシーを呼び、来るまで一杯やり会津宮下まで出た。タクシーの運転手さんの話によると志津倉山の山開きには宮下から村営のバスが出て、麓で民芸品売り場などが開かれ盛大に行われるような話を聞いた。
 今原稿を書いている時彼の地は大雪に見舞われている。山旅でわずかな言葉を交わした人々の姿が目に浮かぶ。この大雪の中、元気で生活しているだろうか、ふと飛んでいって顔を見たいような気になる...。
 それにこの雪であの山々、あの道はどう変わってしまったのか雪化粧した道を歩いてみたい。

追伸
 このコースは第4回東北総合体育大会 山岳競技コース(博士山~志津倉山)ですが、途中荒れていて少ししか歩けませんでした(入道沢~横曽根峠まで)。が、いつか暇ができたらヤブこぎ道具を持ってやってみたいと思います。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ242号目次