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西黒尾根
麻生 光子

山行日 1980年12月13日
メンバー (L)田原、江村(皦)、中村、麻生

 冬山合宿を前にして一度足慣らしのために雪を踏んでおきたいと田原さんに話したら快く西黒尾根に同行してくれることを約束してくれました。この日は初めて同行する中村さんも一緒で、場合によってはスキーもできるのではないかと冬山装備ともどもスキーも持参。いつものように田原さん運転の車で荻窪を前日17時30分出発。
 途中下車をしながらも土合駅に着いたのが22時。湯檜曽辺りで粉雪がチラチラ舞い始め、一晩中降り続いた雪は朝起きると30センチも積もっていた。普段は登山客でごった返す土合駅も今朝は冬囲いされた駅構内もひっそりとしている。7時30分出発。
 しばらくは除雪車とすれ違いながらロープウェイ駅までのんびりと歩く。それから先は膝下まで潜り込む新雪を蹴散らしながらラッセルをする。以前、ラッセルって何だろうと意味がわからないことがあった。なんのことはない”はでこぎ”のことだと解り、どうでもいいことに外国語が出てくるなあと感心したこともあった。まあとにかくラッセルは昔取った杵柄とばかり張り切って進む。西黒尾根の道標に沿って急な登りはまだ踏み固められていないフワフワした雪のため岩の出っ張りで滑りながらもあまり苦もなく登る。雪は止むこともなく降り続き、白一色のため少々乱視気味の眼は進路を定めるのに時々戸惑う。2時間も歩いたろうか、鉄塔を過ぎ樹林帯も途切れ横殴りの風が吹いてくる。これから先は風も強くなり尾根は歩けないと引き返す。面白いのはこれから先と心残りもあったが仕方ないと自分に言い聞かせ180度転換。下山はいつものように転げながらフルスピード。尻餅をつくと胸まで埋まる、行きよりずっと雪が多くなっている。結局、ワカンもアイゼンも練習する場所がなかったが、思えば冬山という山はこれが初めて。冬山の面白さは雪にあるのではないかと一人納得して帰る。今年は冬山をやりたいと言う中村さんともども田原さん、江村さんの思い出話をチラチラ聞きながら、「冬山はのぞかず抱かれよ」という寺島一男さん(山と仲間12月号)の言葉を思い出しながら冬山合宿に参加したいと考えている。


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