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裏岩手縦走
村山 久美子

山行日 1980年10月4日~5日
メンバー (L)鈴木(一)、遊佐、村山、島田

 山行予定表にこれが載っているのを見つけた日から楽しみにしていた裏岩手。山を始めて9ヶ月余りの間、一度も家に帰らず親不孝を続けていた私。山もさることながら、久し振りに岩手の空気を吸えることを嬉しく思いながら、10月3日、列車の通路に横になる。側には鈴木さんと遊佐さんが思い思いに寛いでいる。こんな風に列車に寝転んだりすることがしっかり身に付いて抵抗感も全く感じなくなった自分をちょっぴりおかしく思いながら目をつむった。
 4日早朝、懐かしの盛岡へ到着。雫石へ向かうべく田沢湖線へ乗り込む。登山者の姿もちらほら見え、岩手にも登山者がいたんだなあーと当たり前のことに感心していた。
 兆子さんとは雫石のバス停で合流する予定である。三人で何気なく発車時間を待っていると、アレッ?兆子さんの姿が突然目に入った。昨日はお姉さんの家に泊ったとか。まだ新婚生活1ヶ月にもならない兆子さんは、結婚される前と少しも変わらぬように見えたが言葉の端々に表れるおのろけ話。私は少しばかり羨ましい気持ちを隠しても微笑まずにはいられなかった。さて、雫石駅で朝食を済ませバスに乗る。天気は最高といえる。バスの中から鈴木さんが今日歩いて行く山を教えて下さる。なだらかに連なる山々に私は親しみを感じていた。今年の紅葉は雨枯れであまり良くないと言われながらも、太陽の光を受けてキラキラ輝いている木の葉たちは充分私を満足させてくれた。網張より座って足を伸ばせば地に着きそうなリフトに3度乗り終点に着く。8時40分、兆子さんのトップで出発。犬倉山分岐で早々と一本取る。名カメラマン二人が熱心にレンズを覗く間、兆子さんと私はのんびりチョコレートなどかじっている。10月の岩手の山なのだから少しは寒さに震えることもあるだろうと期待していたのに、お天気が良いせいか汗かきの私にはタオルが必需品であった。岩手に住んで18年、山といえば遠足で行った小さな山しか記憶にない。岩手にもこんないい所があるなんてネー。と兆子さんと二人で何度も繰返していた。
 のんびり山行の気楽さか、鈴木さんと兆子さんは思い出話の中にいろんな人を登場させて話が弾む(皆さん、クシャミをした覚えありませんか?)。滑りやすい道にハッとしながら耳を傾けているうちにいつの間にか顔は知らずとも頭に染み込んだ名前が幾つか、その人の性格までしっかり覚えてしまった。さて、三ッ石山荘(無人)に着いて軽く食事を摂る。鈴木さんと兆子さんが笹の葉の笛を鳴らした。さっそく新しい遊びを見つけた子供のように私と遊佐さんも真似するがなかなか音らしい音にならない。悔しいので三ッ石山へ向かう間中、道の脇の笹の中からよさそうなものを引っこ抜いて口にくわえ鳴らし続けてハァハァいっていた。
 三ッ石山、11時23分着。360度のよい眺望。私の家はどの方向だろうか。岩手山と秋田駒ヶ岳が感じよく目に映る。来年は岩手山をやりましょうと鈴木さんと固い約束をした。今から楽しみである。そしてもっと東北の山を知りたいと思った。小畚山でものんびりする。周りの景色も秋を思わせ気持ちが安らぐ。ちょっぴり風は冷たいがのんびり山行のため少々ピリッとしないところもあるけれど、こういう山も私は好きだ。子供ができたら一緒に歩きたい山(いつのことでしょうね)。そこから少し下だってジグザグの登りをいくつか繰り返して大深山着、そこからはひと下りで大深山荘である。途中で枯れそうな水場で水筒を満たす。2時37分、山荘着(無人)。天気図の時間までお茶を飲み談話。天気図は指名により私がとってみる。明日もたいして変わりなさそうである、夜空は満天の星。明日も期待できそうだ。
 10月5日、岩手山と日の出の写真を撮ろうと暗いうちから出発。途中で名カメラマン二人はカメラを抱えて山にレンズを向けるが日の出はそれから約30分後、5時40分であった。女性二名はその間、寒さに耐えていた。前諸檜から諸檜岳、そこで小休止。山々を改めて眺めながら来年のコースを楽しく考える。最後のピーク畚岳は巻道を通り八幡平のバス停へテクテク歩いて行く。鈴木リーダーご苦労さまでした。来年もよろしく。他三名ともに東北人、また同行できることを願って...。


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