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日光・薬師岳~夕日岳
安田 章

山行日 1981年4月26日
メンバー (L)川田、広瀬、川又、村山、高木、安田、植村、福地

 出発の夜、東京は雨。私にとって今回は初めての山行、天候の回復を祈りつつ上野を発つ。当初の予定とは逆に細尾峠より入り古峰神社に抜けるコースをとることになる。
 山が初めての私はザックもなし、手提げのバックに荷を入れ、途中乗り換えの宇都宮で川田さんよりお借りしたザックに詰め替える。
 22時30分、国鉄日光駅着。ガランとしたホーム。今思い出すとあの時あそこには私達8人しか居なかったような気がする。シュラフに潜る前に駅前広場に出て空を見上げる。雨はすっかり上がっている、満天の星空。ひとしきり皆の天文学の知識が飛び交い、眠ることにする。しかし、私は一向に寝付かれない。下が固いこと、寒いこと(明け方には0度C近くに下がったのではないだろうか)。そして何よりもこの星空が明日登ることへの期待を膨らませてくれたからだろう。
 朝、思った通り良い天気だ。冷たい空気に体は冷え切っている。殆んど眠れなかった(大丈夫かな?)。熱い缶コーヒーが美味しい。6時に2台のタクシーに分乗して日光駅を発つ。東武日光駅の前を通り神橋へと続く道。小学校以来の日光。懐かしさが込み上げる。静かでのどかな朝、私の一番好きな時だ。20分ほど走ってタクシーを降りる。落石の心配があるのであまり先へは行けないとのこと。
 細尾峠へ向かう。ここはまだ車道、前奏曲といったところ、山の冷気と朝陽が心地よく風も殆んどない。何という素晴らしい天気に巡り会えたことか。途中の道端で朝食を摂り、8時前に細尾峠に着く。地図と磁石を使いこれから向かう薬師岳を見定める。私がトップになり登り始める。意外にきつい傾斜に息が弾む、汗が滲む。細い尾根道、高度が増すにつれ後方に男体山が見えてくる。道は程よく湿り歩き易い。しかし、体の方は慣れないせいか重たく汗がかなり出る。でも、辛い登りも40分程度で終止符、薬師岳山頂に着く。やはり嬉しい。北には丸い男体山と鋭い感じの帝釈、女峰、赤薙山の対照が面白い。その間に大真名子、小真名子がチョコンと顔を出す。写真も忘れずに撮る。反対側に目を移すと、これから目指す夕日岳、地蔵岳とそれに続く稜線が見える。
 なだらかな道。所々に雪が残る、柴を踏む音。皆の話声。あくまでも明るい空。暖かい日差。ああ、山に来たなという感じ。
 9時半、夕日岳への分岐点になる三ツ目に着く、そこにザックを置き身軽な体で夕日岳へピストン、15分ほどの登りであっけない。山頂で一本とる。今度は男体山を背景に薬師岳と今まで来た道が見える、随分来たな。
 よく喋る川又君。地図と山を見比べる高木さん、びっしょり汗の広瀬さん。地図の裏に山のスケッチする山村さん、皆んなそれぞれ山を楽しんでいる、山の仲間に入っていく、だんだんと、そんな自分を感じる。
 三ツ目に戻る。一人の女性が地蔵岳よりやって来る。一瞬微笑んだように見えたが、俯き加減で薬師岳に向かって行ってしまった。本当は夕日岳に行きたかったんじゃないかな(その時、広瀬さんが頭をザックに突っ込み、大きな尻を向けて夕日岳への道を塞いでいたのだ)。気の毒みたい。
 11時、地蔵岳を少し下った所で昼食を摂る。1時間半のタップリした休み、裸になって昼寝を決め込む。太陽が眩しい、汗が流れてくる、朝の寒さが信じられないくらいだ。
 ここからは下る一方。足早に下ると沢に出た、沢の音というものは何とも耳に心地よい、疲れをいっぺんに忘れさせてくれる。早速始まるのが沢登り、私も少し真似てみる、とても楽しい、いつか本格手にやってみたい、そんな楽しい時も過ぎて山を降りる。
 終着の古峰神社には14時40分着。福地君、植村君と私の三人で記念撮影。そう、記念すべき我らの最初の山行が終わったのです。
 ビールで乾杯。皆さん本当にありがとうございました。装備の面、登るペース等反省すべき点もありますが、今回は好条件に恵まれて思い出に残る山行となりました。
 東武新鹿沼に向かうバスの中、ユラユラ揺れて気持ち良い疲労感。昨夜の寝不足も手伝って眠くなってきました。もうだめです。おやすみなさい。


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