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雨の大雪山
伊藤 光男

山行日 1981年7月19日~24日
メンバー (L)江村(皦)、田原、伊藤

 今回の山行は田原一家の里帰りということで我々二名同乗し北海道に行った訳であります。いい加減車にも飽きてきた頃、大雪高原温泉に着いたのは午後4時頃だったと思う。ここで田原一家と別れる。立派な大ホテルと今にも壊れそうな小屋の二軒と大駐車場とひっそりしている。我々はテントを諦め小屋泊りにして温泉に浸かる。やはり湯の豊富さと素朴さに感激しながら、ついついアルコールのメートルが上がってしまう。山に登る前に温泉に浸かるのは今回が初めてだろう。
 翌朝またしても温泉に浸かり前夜のアルコールを身体より出し、ナキウサギ研究員と同行する。営林署事務所で登山届を済ませて出発。ヤンペタップ川を上流へと蚊とヤブに悩まされながら空沼まで進む、この辺より雲行きが悪くなりガスってきた。小屋番のおやじが昨日ここでヒグマを見たということで一寸不安になる。なるほどヒグマの「キジ」が雪の上に点々とある。ナキウサギの声とエゾキンバイ草の群落を楽しみながら分岐に着く、これより研究員と別れ、江村氏のトップで急な雪渓を高根ヶ原へと向かう。しかし、ピッケルを持参しなかったのとガスに悩み、バテバテになってしまった。やっとの思いで高根ヶ原に到着したが少しばかり近道をと考えたのが悪く大分時間を食ってしまった。なだらかな尾根道を白雲岳へと進む、道の両側はピンク、黄、白、ムラサキ、黒その他の色々の花畑であり、我々の疲れを取り除いてくれる。しかし、天気は思わしくなく風雨と寒さが段々酷くなり、白雲岳は翌日ということになり白雲岳避難小屋そばにテントを張る。
 7月21日
 今日は田原氏と会うとのことで昨夜全部ドリンク剤を飲み干してしまった。さすがに頭が重い。それに昨夜来の大雨で殆ど寝ていないこと、シュラフ、セーターだけは二重のビニールに詰め頭上に置く。なにしろテントの中に5cmぐらい水が溢れるのだ、大雨そして強風なのであった。うまい緑茶を飲みやっと身体があたたまる。外を見れば今日も天気はあまり良くない。傍でシマリスがサーサーと駆け回る姿を見て仕方なく出発する。白雲岳までは40分くらい、立派な道を頂上へ進む、何も見えない頂上に三峰のカンバンを取り付け、雨が降らないことを祈りながら記念写真を撮る。しかし、北海岳に着く頃は雨と強風で目も開けていられない有様で視界は1m、どうしても旭岳テント場まで行くことになり、ただひたすら足元を見ながら進む、道標と道がはっきりしているので、迷うことなくテント場まで辿り着く。軋むテントの中で江村氏と震えていると「モートー」の声がして、待望の田原氏が来たのである。ドリンク剤「一級酒」と昨日とれたての「ウニ」を肴に....。
 今回の山行では散々の目にあいました。酒の飲み過ぎでバテたこと、それから大雪山の魅力、種類の多い高山植物、それと「ヒグマ」、一般登山道は完全に整備されていること。また、夏でも烈風が吹き視界が利かないこと。有毒温泉があること(この付近で去年ヒグマが二頭死んだと小屋番が言う)、また機会があれば是非行きたい山です。

コース
東京(車)→八戸(フェリー)→苫小牧(車)→層雲峡→大雪高原→高根ヶ原→白雲岳→北海岳→松田岳→荒井岳→間宮岳→旭岳→間宮岳→中岳→北鎮岳→黒岳→層雲峡(車)→東京


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