トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ244号目次

南アルプス 甲斐駒ヶ岳
増田 潤一

山行日 1981年10月10日~11日
メンバー (L)伊藤、広瀬、高木、国行、川又、麻生、安田、植村、増田、伏見、安岡

 韮崎より竹宇駒ヶ岳神社へ向かう車中より見えた大きな山容が甲斐駒だということが素人の僕にもすぐ分かった。
 どうもこの頃から腹の具合が良くなく、その山の頂の遠さと相まって僕はえらく滅入ってしまった。腹は登る前に下っていたのです。その不安は見事的中、登山口より15分も経たないうちに体中の水分が全て絞り出されるように地面に滴り落ち、息はぜいぜい、足元フラフラ、胃は唸りをあげだしたのです。小休止のことだけが頭の中を駆け巡り時計ばかりが気になり、トップの方から「こんなにゆっくり歩いていたら調子が狂う」と言われ、言葉が心にグサリと突き刺さり何とか気分だけで歩いていました。普段の不摂生を反省したのです。
 それでも何とか粥餅石の辺りで体も慣れたので助かりました。八丁登りを一歩一歩耐え、刃渡りのスリル、やっと12時に五合目の暖かい日差しに迎えられての大休止にやっと生きた心持ちになったのです。
 五合目より七合目は思ったより短く、テント場はまるで空に浮かんでいるようで鳳凰三山のシルエット、やがて甲府の町にネオンが灯り寒さも忘れてしまいました(この時だけ下痢も収まったようです)。
 翌朝の刻一刻と変化する空と山々、まるで大地が息を吹き返すようで本当に僕は不思議な世界に来てしまったものだと思いました。
 頂上に着いた時はやったとは思いましたがこの朝の感激には及ぶものではありません。しかし、山頂から見える山のどれかに僕はきっと登ろうと誓いました。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ244号目次