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黒斑山の山行を経て
林 俊明

山行日 1981年11月15日
メンバー (L)田原、渡辺、中村、相沢、高木、村山、沼山、岡部、国行、勝部、原口、増田、林、伏見

 今回は三峰山岳会での初の山行であった。よって、ホカホの新人であります。昭和36年5月16日生まれの20才です。現在、國學院大學文学部哲学科一年に在学中。
 出身が岐阜県の恵那市であり、昔から夏山はちょくちょく登ってました。本格的に登ろうとしたのが大学に入ってからのワンダーフォーゲルに入部してからであります。7月末までガンバッテましたが主に金銭的、時間的、体制的についていけず脱落しました。たった3ヶ月くらいの期間だったけれど、現在自分の山の知識は全てその時教わったものである。今でも山に登るとワンゲルの辛い山行を思い出さずにはいられない。
 今回の山行ほど山の自然美を無視した時はなかった。一緒に登っている人達は当然僕にとって知らない人ばかりであった。そして皆さんは社会人で学生から見れば大人である。口が達者な僕も休憩中など笑いの中に入っていけなく、ただ脇で微笑むだけに過ぎず。そんな大人ばかりの中で独り淋しかったのであろうか「自分は何故、今こんな所にいるのだろうか?」という疑問で責められずにはいられなかった。そんな気持ちがあったからか、壮絶な景色も端で騒いでいるほど自分は心の底から素晴らしいと感ずることが出来なかった。かつてワンゲルで登った時など頂上で目を潤ましたものであったのに。
 雪上で前の足跡目がけて自分の足をズボリズボリ、その度俺は一体こんな所で何してんだろうと思う。そんな時フイッと後を振り向く。僕より小さい大人達がちょこちょこ付いてくる。急な坂を危なげに降りてくる。彼女らにとって僕のような日々ヒマだらけの学生と違って今日は唯一の休みの日であり明日からまた仕事であろう。毎日働いているのだから日曜日ぐらい部屋でテレビでも見てゆっくりしていればいいのにとさえ思えてくる。わざわざえらい目にあいに山なんか登らなくてもいいのにと思うが、その反面自分と同様に後を付いてくる彼女らを見ているとその時に見た下界の景色よりも心に染み込むものがあった。そんな大人の中で自分独り子供がいると思うとなにかすごく滑稽な気さえもした。
 今その山行についての思いは山の自然美に関してはちっとも残っておらず、ただ新たな人との出会いの気持ちが残っているだけである。
 僕が何故大学のサークルを選ばないで社会人相手の会に入ったか、多分子供である自分を子持ちのおじさんやオールドミス?にならんと必死な人や日々忙しい人達の中で見つめたかったためかも知れない。

黒斑山
沼山 悦子

 11月の中旬ともなると山はもう冬です。装備も冬用になるし、体力も今まで以上に必要となります。だから今年は黒斑山で最後だなという気持ちでした(その後、白毛門に参加したのですがバテてしまい皆さんに迷惑を掛けてしまった)。
 小諸の駅から小型バスとタクシーに乗り込んで東坂峠まで直行。降りるともうそこは1973mの高さです。楽々と1900m近くまで登れるなんてガッカリ。朝3時30分頃なのでさすが冷え込みます。じっとしていると身にしみるので足踏みなどして体を動かしてます。雪が一面に積もっていて寒そうだけれど空は雲一つないし、星は綺麗だし、月がとっても明るいし言うことありません。田原さんの号令で体操をしてすぐ出発することになりました。月の明かりを頼りに雪道を歩くので、よく音を凝らして歩かないと躓きそうです。前の人待ってください....、二本目の休憩の時、日の出にご対面、何度も見ているけど胸にじわりとくる快感があります。
 車坂峠からトーミの頭、樹林帯を抜けると前方に浅間山が見えてきました。眺めが良いけれど活火山なので噴煙が出ているし、今に爆発しないかとちょっと心配です。浅間山を眺めながら黒斑山の山頂まではあっという間で、7時には到着してしまった。2414mの山頂です。皆んなで記念撮影をしました。
 さて、これからどうするのかなと思っていると時間も早いので浅間山まで登ることに決定。爆発しないことを祈ります。途中、野生の鹿を発見。しばし、人間と鹿のにらめっこ。善良な人間と判断したのか逃げもせず、すぐ食事を始めてしまいました。山で野生の動物に会えるなんて感激です。
 稜線上を歩いていくと天気は良いのだけど風が強く飛ばされそうです。下界はポカポカ陽気で穏やかそうなので差を感じます。丁バンドの岩場も無事に降り、さあこれから浅間山の登りです。雪がかなりあるので足元がふらつきます。風も更に強くなってきて、あちこちで転んだりして皆んな必死です。もし飛ばされたら障害物がないので下まで落ちてしまうでしょう。頂上に近づくにつれて風が竜巻となって襲ってきます。残念ではありますが途中で降りることになりました(内心ホッー)。後は浅間山荘まではなだらかな道です。ご苦労様でした。女性が多かったので賑やかで楽しい山行でした。


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