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ウトウ沢溯行記
広瀬 昭男

山行日 1981年7月19日
メンバー (L)播磨、川田、広瀬、高木、勝部、鈴木(嶽)

 未明にタクシーでウトウ沢手前まで入る。林道を1時間も歩くとウトウ沢に着き、しばらく行った所で地下足袋に履き替える。核心部までは苔むしたゴーロが続く。途中釣り人に出逢い、釣れた岩魚を見せてもらう。奥深い沢なので常に地図と照らし合わせながらの溯行である。
 ゴーロが過ぎると沢は右へ大きく曲がり、そこからがこの沢の核心部となる。チョックストーンの滝、樋状の滝等々、色々楽しませてくれる。一ケ所シャワークライムがあり、川田さんと同じく水流の右側を攀じったが、ホールド、スタンスともに小さく難儀した。そんな訳で他の人達はザイルで確保し左側を登らせたが、こちらの方が簡単だったようだ。
 次から次にと架かる滝を直登したり巻いたりしながら源流部へやっと辿り着く。この付近は沢が荒れていて登り難かった。
 ここより日瑠賀岳頂上まで休憩なしで2時間のヤブこぎです。稜線も道はなく根曲り、石楠花の枝に乗って進む、頂上直下でやっと道が出てきてゴミもチラホラ。
 実に長い溯行であった。タクシーを降りてから頂上まで8時間を要している。
 この山も信仰登山の対象で石祠が祭ってあり、当然の如くおミキなんぞもありましたが、少し古いようなので匂いだけ楽しんで口にはせず。
 下山道は上地の青年団員が数日前に手入れをしてくれてあったので歩き易くなっておりました。しかし、地図上の道と実際の道とは少し違っており、なおかつ一気に下るのではなくだらだらと山を巻くばかりで、焦りと疲労とで歩みも遅れがち。3時間ほど下った頃、畑が出てきた、雷も鳴ってきた。人家に着き、電話を借りてマイクロバスを呼ぶ。
 予想以上に時間のかかった山行で、登り始めの時間がもう少し遅れたならば山中でビバークを余儀なくされるところでありました。
 丹沢とは少しばかり趣の違った沢で、溯行というよりもむしろ釣りで入谷したほうが面白い沢ではなかったかと思う。


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