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吾妻連峰 スキー縦走
広瀬 昭男

山行日 1982年2月20日~22日
メンバー (L)川田、植村、勝部、広瀬、岡部

 安達太良山スキー縦走がリーダーの都合で中止となり急遽吾妻連峰へと変更になった。
 福島サービスエリアで仮眠を取った後、高湯・吾妻スキー場へ向かった。参加者5名中唯一の雨男である私がいたためご期待通り朝から雨です。車中で朝食を摂りつつ止むのを待ったが一向に止む気配もなく、むしろ強くなるばかりである。決行か否かのリーダーの判断を待つ。いつもの調子の「行こう」という言葉が予期に反して返ってきた。何となく気が重いがここで1日待っていても止みそうにない雨だ。
 リフト2基を乗り継いで時間を稼ぐ。登山届提出後、スキーツアーの出発だ。風雨が強く荷の重みも慣れぬうちは辛い。お日様が少しばかり顔を出してきた、私と同じはにかみ屋なのだろう。あまり強く照らない。謙虚ですネェー。
 五色沼を見下ろす当りからスキー滑降。沼の縁をトラバース。一切経山のコルまでガスの中、ルートファインディングで進む。暫く行くと酸ヶ平、浄土平、吾妻小富士などが眼に入ってくる。眼下に酸ヶ平避難小屋が見える。あそこまで一気に粉雪を蹴散らして滑り降りよう。と思ったのだが荷が重くてバランスは崩れ、スキーの金具の具合が悪くてすぐに外れてしまう。靴と金具が合体していないためである。
 岡部さんがおっかなびっくり滑り降りてくる。止まる時はいつも大きな尻餅をついてしまう。広大な斜面のあちこちに戦禍の後が残されていた。
 避難小屋の中では先に下だったメンバーが天幕設営のために一生懸命雪かきをしてました。一通り掘ったところでエスパース設営。もう慣れたもんです、このメンバーは。
 小屋の中には風が全く入ってこないので暖かい、天幕の中は尚更のことです。食前にメザシを焼いたので煙たかったでしょう。
 風は一晩中吹き荒れておりました。
 翌日快晴。嵐の後の静けさとでも言えるような気持ちの良い朝でした。自然は美しい、何故ならば厳しさに耐えているからだ。
 突然、爆音が聞こえてきた。何と、福島県の暴走族?土湯方面から遥々スノーモービルに乗ってきたのだ。昨日、転びながらやっと滑ってきた斜面をいとも簡単に上がって行ってしまう。
 我々はスキーで一歩一歩進む。こういった自然の中では己の足で雪と一体になって歩き滑る方が良かろう。汗を流して初めて知る頂上での充実した征服感。機動力を利用しては何も残らない。これがスキーツアーの止められない理由であろう。
 蓬莱山を越えてから東吾妻山へ登る。スキーによる登りに不慣れなため必要以上に時間がかかってしまった。頂上付近には樹氷が出現。360度、十分眺望を楽しめた。
 安達太良山、朝日連峰、蔵王と申し分ない。安達太良山は2年前、山スキーに行った時、強風とガスで頂上へは立てなかった。朝日連峰は入会して初めての夏合宿で縦走した。その時のメンバーの一人、岡部さんも懐かしそうに眺めている。あれが朝日岳だ、こっちが以東岳だなどと勝手に決めて当時のことが脳裏をかすめた。
 大休止後、出発、処女雪のおいしそうな真っ白の雪原が眼前に広がってきた。今日は金具と靴をテープで縛って絶対に外れないようにしてあるので思うように滑ることができる。下の方に着いて荷物を置いて空身で滑ったが何と快適なことだろう。
 滑降を楽しんだ後はまた樹林帯の中を歩く。標識はないが目の前の高山を目指して烏小平へと向かう。道路に出てまたもスノーモービルの連中と遭遇。感じが悪い。
 ここでコースの変更となった。高山を越えて土湯に下るのを吾妻小屋泊りとした。
 吾妻小屋でスカイラインを滑って行く。小屋は立派だ。二階が開放されており部屋は清掃されて綺麗であった。ストーブを焚いたが小屋の中は煙だらけ。ランプを灯して反省会。このままずっと続けばと思っても次第に瞼がくっついてきて、皆さんおやすみなさい。
 2月22日、曇。昨夜、眠り薬をとりすぎたためか食欲がない。大好物の納豆も喉を通らず。食後、小屋内を「来た時よりも美しく」清掃して宿泊料を払ってから出発。
 下山コースはスカイラインを通って高湯・吾妻スキー場へと戻る予定である。
 地図によると所々つづら坂がある。果たして1ヶ所道路が雪に埋まってトラバースの所が出てきた。片側はスッパリと切れ落ちて滑落したらもうこの世ともお別れです。川田、勝部の両氏がトレースを付けて降ったが危険とのことで大幅にコース変更となる。
 吾妻小富士から微温湯へ下る。小休止の後、だんだん雪の状態が悪くなりツボ足でもスポスポ潜ってしまいとても難渋しました。時々スキーが木の枝に引っかかりイライラしてくるが一向にどうしようもない。四苦八苦しているうちに微温湯に到着。旅館は冬期閉鎖されているため温泉に入れず、止むなく林道をスキーで滑って下ることにした。適当な斜面のため気持ち良く飛ばせる。途中で雪がなくなりスキーをザックに取り付けて歩いて行く。
 北林よりバスで信夫温泉で一風呂浴びて垢落とし。この温泉の効能を読んでビックリ。勝部、植村氏そして私の三人は苦笑したものでした。詳細は各氏にお尋ね下さい。
 今回はコースの変更が多かったが事故もなくスキーツアーを十分堪能することが出きた山行でした。


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