トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ245号目次

鉢盛山
中村 順

山行日 1981年12月13日
メンバー (L)江村(真)、広瀬、勝部、植村、国行、岡部、増田、中村

 初めて編集員になって皆んなに気持ちよく原稿の催促をして、いざ割付をしようとすると鉢盛山の原稿を頼むのを忘れてしまった。「しまった、行くんじゃなかった」と思いつつ書くことにする。もう半年近く前のことだが、この山行は山以外のことで記憶に残っている。江村のお兄さんがリーダーとなって始めは鉢伏山へ山スキーの予定であったが、雪が少なく天気も良くなく、江村さんの別荘で話し合って鉢盛山に変更する。車2台で林道を登って行き、途中でチェーンを付けて走り始めた途端に我々の車のチェーンが外れる。お互いによく知らないからチェーンとはこんなものかと言いつつ、また引っ掛けて走り出す。チェーンの端が車体に当たってうるさいことおびただしい。泥除けが吹っ飛んでしまって、「雪国では毎年泥除けを壊すのかねェー」と、まだ分かっていない。雪が深くなってきて、この辺りに停めておこうとお兄さんが前から歩いてきてチェーンを見て、「何だこのチェーンは...」。なにせホックを引っ掛けただけで回し込んでストッパーを掛けてなく、裏表が逆でしっかりチェーンがタイヤに食い込み、ゴムを掛けるフックもタイヤ側に切り口を向けてある。
 ここから更に2時間近く林道をスキーにシールを付けて登って行く。一人がかなり遅れてくる。上から眺めているとペンギンがよちよち歩きをしているみたいだ。「しょうがないね、荷物を持ってやるか」と下り始めようとしたらシールの金具が折れてしまう。シュリンゲで直しているうちに全員が揃う。先に来て寒い中を30分以上待たされたお兄さんはさすがに機嫌が悪そう。
 まだ先は長いんだからと休みもそこそこに登り始める。時間的に頂上は無理とのことであったが元気な我々はスキーを担いで行く。新雪で結構深くトップの広瀬さんはいかにも登りにくそう。それを見ていた、この日ワカンを持ってきた国行、増田両氏は、「僕達が先頭に行きます」。後で、「ヨォ、男の中の男、カッコイイ、色男」と褒めそやす。この二人のお陰で皆んなが冗談を言いながら分岐まで登る。冗談で済まないのが前の二人で、分岐に着く頃は二人とも蒼白で本当にご苦労さまでした。
 風も一段と強く、ここで諦めて下山することにする。植村君差し入れのスイカを皆んなで食べて、と書くとおつだが実は缶詰で稀代な味であった。一休みの後、下山は樹林帯の中、一直線に行く。30分くらいで林道に出て担いでいたスキーの役立つ時であった。ところが意に反してrン道はそれほど雪が多くなく滑ったと思うと石に乗り上げて急ブレーキ。特に植村、勝部両君は新品のスキーでこの日がフデオロシ、こうなりゃ意地だとばかり車の所まで板で行く。裏面は見るも無残で「行くんじゃなかった」という次第です。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ245号目次