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八ヶ岳ジョウゴ沢氷瀑訓練
広瀬 昭男

山行日 1982年1月15日~17日
メンバー (L)広瀬、勝部、安田、桑名、関谷、村山

1月15日 晴
 1年振りの氷瀑登攀で腕がなる。八ヶ岳の冷気で凍ってツルツル滑る林道をサーカスもどきの足どりで赤岳鉱泉へと向かう。
 天幕地到着後、適当な場所に我々の安息所を設ける。天幕の中でゆっくり昼食をとり、夕方まで時間があるのでジョウゴ沢へ様子を見に行くことにする。
 F1 8mはガッチリ凍っていて数人がダブルアックスで練習している。今日、我々は本格的にやる予定ではないためアイゼンなしだ。基本的なカッティング技術、スクリューハーケンの打ち方、氷瀑での確保法等々を教えた。
 皆さん氷瀑は初めてなので楽しそうに氷をピッケルでカリカリと削ってステップ作りの練習をしている。しかし、それでは物足りなくなってきたため登ってしまうことにした。確保さえしておけばアイゼンなしでも大丈夫である。勾配も緩やかなので危険性も少ない。ステップは大き目に作り、そこへ確実に乗ることが要求され、これは基本技術習得に効果があったようだ。次第に慣れてくると確保なしで登ってしまう者もおりました。

1月16日 曇後雪
 さあ今日は頑張ろう。先ずはF1にてダブルアックスの練習。確保の仕方を教えて交替で登る。2時間近く登降を繰り返すうちに全員ダブルアックスに慣れてきた。
 大休止をとったあと、F2 13mへと向かう。この滝も完全氷結している。数多くのクライマーが登攀したため滝全体がボコボコに穴が開いたようだ。何と哀れな氷瀑だろう。
 私がトップを務めることにし勝部さんに確保をお願いする。必要ないと思ったが、一応中間ビレーにスクリューハーケンを1本打った。何故か中間ビレーを取ると次の登攀に対して安心感が湧いてスムースに進む。滝上の木でセルフビレーを取って勝部さんを登らせる。その後はずっと勝部さんに他の人達の確保をしてもらった。その間、下山路を探して周ったが何処にも見つからず、結局F2右岸のルンゼを懸垂下降することにした。この落口付近は足場が悪くザイルセットに手間取った。
 全員無事に降りてから楽しい昼食です。紅茶もワインも咽を十分潤してくれた。午後は裏同心ルンゼへ向かう。20分ほど入った所に10mくらいの滝があり上部が雪壁になっている。登攀できるのは下部5~6mだけだ。私が最初にフリーで取り付いたが出口付近の垂壁で少し苦労させられた。下りは左側の緩斜面をダブルアックスで易しいクライムダウン。
 スクリューハーケンは数回叩いてからねじ込んでいく。この氷瀑では堅くて氷の中に入っていかず直角に曲がってしまった。パイプハーケンはハーケンの穴に雪が詰まって全く氷に歯が立たない。そこでピッケルとアイスハンマーでビレーを取る。このようにして女性二人を確保して登らせた。何分にもお嫁入り前の大事な体なので必要以上に神経を使ってしまいます。でも、あの登っている時の顔、姿は女性とは思えない。
 一通り全員が登ったので早々に下山とし、途中の斜面でタコツボ掘りをする。生憎雪が少なくフワフワの雪のため、皆うまく掘れずそれでも要領だけは解ってもらえた。
 その後、5mくらいの岩場でボルダリングに挑戦、アイゼンを履いてフリーによるハングはⅤ級くらいだろうか、誰も登れず。もっと実力をつけねばならない。
 その後、10時過ぎまでトランプをして騒いでいたため他のパーティから苦情が出る、それを隣りのパーティ(このパーティも酔っ払って騒いでいた)が勘違いして、一時険悪な空気が漂った。山ではやはり早く寝るべきですね。

1月17日 快晴
 美味しい朝食をとっていると後発隊がやってきた。紅茶やサラダなどを食べさせあげながら協議した結果、我々先発隊はジョウゴ沢で仕上げをすることにし、後発隊は硫黄岳まで登ることに決着が着いた。
 氷瀑も今日で3日目だ。上手に登る。カッコイイ。列車の都合もあるので12時過ぎには下山とする。途中、美濃戸山荘でちょっと一杯やって帰路についた。
 毎年、冬が近づくと早く滝が凍らないかと思う。1月から2月が本番だ。この時季が最も腰の落ち着かない頃である。
 三峰にも氷瀑経験者が増えつつあるので、そろそろゲレンデは卒業したい。来年の冬には面白そうな沢の頂上まで詰めてみたい。


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