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利尻岳
岩崎 和人

山行日 8月11日~13日
メンバー (L)岩崎、金子

 8月12日、稚内港を出た船は利尻島に近づいていた。いよいよ利尻岳に登るのだ。遠くから見てもかなり険しい山であることはわかっていたが、近くで見ると凄い。
 6月頃から立てられていた計画、今回は僕と友人の親戚である金子雅人氏が相棒だ。
 僕らの取ったコースは、船で沓形に上陸し、沓形からのルートで登り、翌日に鴛泊(おしどまり)側に下りるといったコースだった。鴛泊ルートを往復するのが一般的なコースのようだが、沓形から登らなければ見られないという凄い岩場が見たかったのだ。
 沓形に着くと直ぐにタクシーで五合目へ、見返展望台まで登ってしまい、ここからいよいよスタートである。「水場はある」という不確実な言葉に頼ったものの僕は1.5リットルのポリタンに水を入れておいた。
 六合目ぐらいから登りがきつくなってくる。振り返ると眼下に広がる緑と遠くには礼文島が見える。頂上は遥か彼方でガスの中に見え隠れしている。六合目から30分で七合目の小屋に着く、水場があるという言葉は当たったと思いつつ行ってみると水場である沢は涸れていた。この事は僕らを絶望に追いやった。確実なのは、この上には水場はないということだ。ここで雨が降ってきた。非常に天気の変わりやすい所だ。
 道は更に険しくなり土だけの道あり、ゴロゴロの石が転がっている所ありと、バラエティに富んでいる。七合目から1時間半で八合目に到着。相棒の金子君はかなりバテている、僕も同じだ。さっきまで降っていた雨は止んでいたが、ガスが立ち込めてきた。そして、急坂を登りつめて眼に入ってきたのが待ちに待った断崖の利尻の岩場だった。思わず今までの苦しさを忘れてしまう壮快さである。ここからいよいよ沓形ルートの難所になる。ロープを伝って降りる所やガレ場と危険な所が連続する。この頃から雨が本格的に降ってきた。
 16時27分、鴛泊ルートとの分岐に到着、眼下の景色は前と変わりなかったが遠くに小屋を見つけ、1時間で降りられるだろうと見たが頂上からあの小屋まで行くには日が暮れてしまうと見た。分岐からは火山礫の歩きにくい道となり疲労感が増々酷くなる。
 頂上が見えた時は嬉しかった。頂上には神社の祠があって、この陰でツェルトを張り寒さから逃れようとした。
 頂上に吹き付ける風はかなりのものでツェルトはバサバサと煽られるので大変なもんだ。17時には中に入り着替えて夕食をどうするかと考えていたが、水がないのでラーメンを作りボンカレーを二つ温めて食べ、後はビスケットとチョコレートで腹の足しにした。水を持ってくればこんなことにならずに済んだのにと、つくづく思った。
 21時には寝たが30分おきに目が覚めてツェルトに染みてくる水を拭いたりしていたが、金子君はぐっすりと寝ていた。
 8月13日、4時に起床。天気は全然良くない、昨日より風が強い。すぐにでも出発したかったが、金子君のパッキングが遅れ6時になって出発する。
 本日は鴛泊ルートを下山することだけを頭に入れてカメラはザックの中にしまい込んだ。水は300mlしかなく困った。
 沓形よりはなだらかだといわれているけれども、下りはかなりスリルがある。おまけに左側から吹き付ける物凄い風には参ってしまう。頂上から見て1時間で行けると思っていた小屋も着くまでに2時間もかかってしまった。
 五合目を過ぎた辺りから樹林が高くなってきたので風を若干凌げるようになってきたので大助かりだが、金子君が完全にバテている、水がないためである。彼はほとんど飲む水がない、僕も分ける水などあるはずがない。休憩の間隔をできるだけ短くして彼の疲れ具合を見た。
 三合目でハイキングコースとの分岐に差し掛かった時ようやく水場を発見、嬉しかったと同時に生き返った心地がした。長い休憩の後、再び歩き出した。  太陽が顔を出した。下界じゃ天気だったのかと思いつつ、今までガスの中を水欲しさにやみくもに歩き続けてきただけに嬉しかった。腹が減っていたので早く何か食べたいと思った。
 鴛泊港に着いたのは12時になっていた。反省すべきは水のことなど、地元の人の言葉には確実なデータでないことがある。特に沓形から登る時などは下から水を多量に持っていかなければならないということだ。鴛泊側は八合目にも水場があるが、僕らはそこで見逃し水を補給できなかったことなど色々あるが、この辺で終わりとしたいと思う。
 今回の利尻岳登頂で今後の自分の山行にプラスになればと思った。


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