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小川谷犬麦谷
勝部 辰朗

山行日 1982年6月13日
メンバー (L)勝部、植村、安田

 岸記念体育館で行われた救急法講習を終えたその足で奥多摩へと車を走らせた。安田君、植村君という例の変わりばえのしないメンバーで、奥多摩駅でステーションビバークし、翌日犬麦谷の出合まで入った。
 F1の15mをシャワーを浴びて登る。水は大分温んだとはいえまだ冷たい。さて次は50mのタツマの滝が現れるはずだが、目の前にあるのは15m程の滝である。
「おかしいな、こいつがF1でこの上がタツマの滝になっているのか?それでは今の15mの滝はなんだったんだろう」などと思いながらも見た感じは行けそうなので、とにかく登りにかかった。
 しかし、いざ取り付いてみると途中でどうにもならなくなってギブアップ、撤退した。今度は植村君が挑戦して12mくらいの所まで上がったが、そこでどうにもならなくなった。時間がかかり過ぎるので巻こうかと言っているうちに、植村君の体がすっと滑り落ちた。無意識のうちにザイルを握った。8mくらい落ちただろうか、ザイルの伸縮のため植村君はダワンダワンと楽しそうに弾みながらぶら下がっていた。
 それを見て「あっ、落ちたんだ」と思った。グリップビレイを施していたが、ザイルの向け方が悪かったため、トップへいっている方のザイルが手から外れてしまったが、幸いにもザイルは流れずビレイは効いた。よかった。三人で不謹慎にも笑ってしまった。止まってなければ笑い事では済まされない。
 巻道に入って少し上の方から今の滝を見ると2段に分かれた大きな滝となっている。これがタツマの滝だったのだ、直登できない滝をフリーで登ろうとしたのだから落ちるわけである。
 滝上に出てザイルを垂らし、未回収のビナを取りに降り、回収してゴボウで登ろうとしたが垂直のツルツルの岩で上がれたものではない。プルージックで登ったが何回も滑り落ち、一旦下まで降りて巻こうかとも思ったが、悔しいから半分意地になって登った。滝上に出た時はヘトヘトに疲れ切り、体は濡れてガタガタに震えた。
 その後の沢の様子は、10mくらいの滝4本を含む連瀑流帯となったが、快適に飛ばして行った。
 タツマの滝の件は、冷静に考え少し離れた所から見ればそれと気づきすんなりと巻いたことだろうし、それを登るのであればそれなりの人工登攀の用意をして登るべきだった。
 私の判断の甘さ、岩を見る目の甘さを十分反省し、今後の山行に活かしていきたい。


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