トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ246号目次

八ヶ岳集中山行 その4 大同心、小同心
植村 隆二

山行日 1982年10月10日~11日
メンバー (L)佐藤(明)、植村

 学林で阿弥陀南稜パーティと別れて我々は赤岳鉱泉に向かう。集中で大同心、小同心に登るためだ。鉱泉にベースを張り、今日は大同心雲稜ルート~ドームダイレクトルートを登ることにする。大同心稜の急登を詰めていくと目指す大同心の岩峰がはっきりと見えてくるが、それに連れて積雪量も増えてくる。雪があるとは思っていなかったのでなんとも嫌らしい。大同心に突き当たると正面ルートに1パーティが取り付いている。目前で見ると大同心は思ったよりそそり立って見え、上部はほぼ垂直に近い。雪も付いているので登れるか少し不安になってくる。雲稜ルートの取付きは何処か探し、ゼルバンを装着しているとブーンと落石が僕の両側に落ちてきた。正面ルートの人達による落石だ。
 声を掛けて下さいねと確保者と話していると今度はトップが落ちてきた「大丈夫ですか」と声を掛けると「大丈夫ですが岩は脆いですよ」と返ってきた。これから登ろうとしているのに、あまりいい気持ちではない。雪の中を取り付きまで進み、つるべ方式で登ることにし1ピッチは僕が登る。取り付いてみると確かに岩は脆い。もっとも冬のルートをこの時季に登るんだから仕方がないはずだ。出だしは体も慣れていないせいか少し緊張する。スラブ状の壁を少し登って左にトラバースしてからハング気味のところを越す。少々時間がかかり過ぎた。2ピッチ目は佐藤氏がトップで登る。これもスラブ気味である。3ピッチ目はカンテを回り込んでガリーに出る。一カ所アブミで越すが全体にホールド及びスタンスも豊富だ。4ピッチ目は容易でテラスから上の二段テラスまでどこでも登れる感じだ。5ピッチ目はジェードルを登ってドーム下のバンドに出る。ここからダイレクトルートを登る。左上にトラバース気味に登り、垂直のジェードルに入る。ハングに突き当たって越すわけだが、乗越にあるボルトの間隔が遠く残置シュリンゲにアブミをセットするのだが、シュリンゲが半分擦り切れていて、どうにも不安だ。そこで別のボルトの方で乗越そうとしたがこれもだめで、そのうち腕力を使ってしまいどうしようもない。アブミの上で座り込んで一休みして再度初めのボルトにセットすることにした。ランニングビレイをセットし直して、ゆっくりと移動して乗越す。越してみると案外切れないもんだと感じ、バンドで確保中に下を見るとスパッと切れていて改めてホッとする。このピッチに1時間近くかかってしまい、佐藤氏に寒い思いをさせて悪いことをした。アブミ操作をもっと練習しておくことにしよう。6ピッチ目はトップ交代で右のホールドの細かいフェースを登ってドームの左頂上に出た。
 取付きから頂上まで4時間もかかっているがルート図では5時間となっているのでまずまずだろう。後は大同心ルンゼをベースまで戻った。
 翌11日は朝起きてみると天気が良くない、12時までに赤岳集中なのでどうしようかと思ったが、取り敢えず小同心の取付きまで行き天気がもっと悪くなったら巻いて行こうということにする。
 昨日と同じく大同心稜を詰めてから小同心までトラバースする。昨日までの雪は融けているが取付きまで来ると小雨が雪と変わってきた。手がかじかんでくるがクラックルートを登ることにした。今日は佐藤氏がトップを登る。20m毎にいいレッヂがあるというので4ピッチに分けて、1ピッチ目は左上してクラック下まで行き、2ピッチ目はホールドの豊富なチムニーみたいなクラックに入る。大同心に比べると岩もしっかりしていて、ホールドも手でしっかり掴めるし快適だ。
 3ピッチ目は右にレッヂをを回り込みながらクラックに入るが、ここで切れ落ちているのがわかり、かなり高度感もでるが容易だ。
 4ピッチ目はクラックは小さくなり左右にルートは分かれる。左のルートを取り肩に出てちょっと行くと左岩峰のピークに出る。
 ピークからは横岳頂上や稜線上の人々がはっきり見える。クラックルートそのものは高度感だけで易しいし快適なルートだと思う。横岳頂上までコンテで登り、稜線を赤岳頂上まで行き皆んなと無事合流した。

〈コースタイム〉
10/10 美濃戸口(6:40) → 美濃戸(7:20-50) → 赤岳鉱泉B.C(9:10) → 大同心取付(11:30) → 2ピッチ目(12:35) → 4ピッチ目(13:25) → 5ピッチ目(13:37) → 6ピッチ目(14:40) → 大同心ピーク(15:00)
10/11 小同心取付(9:07) → 2ピッチ目(9:30) → 3ピッチ目(9:45) → 左岩峰(10:00) → 横岳頂上(10:10) → 赤岳(11:00)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ246号目次