トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ247号目次

正月合宿 B隊 鳳凰三山
岩崎 和人
山行日 1983年1月1日~3日
メンバー (L)安田、田原、江村(真)、山本、鈴木(嶽)、小林、中村、高木、増田、勝部(久)、牧野、国行、桑名、岩井、古矢、市川、岡部、岩崎

 「合宿」と「冬山」という言葉で、身を引き締めて六本木を後にした。
 僕はカマ天を背負子につけて、買ったばかりのザックは哀れにも背負子にくくりつけられている。
 山行といえば夜行が多かっただけに夕方4時の集合のため明るい街の中は性格的にいやだ。それでも人影がまばらなのは救いである。
 新宿駅で鈴木(竹)さん、川森氏、麻生さんの見送りをうけて出発する。
 江村(兄)さんと甲府で合流、一緒でなかったので心配していたが一安心する。中村さんたちはもういい気分になっている。穴山駅に全員集合になったのは、1月1日の午前4時30分ごろのことだ。
 御座石鉱泉のマイクロバスで御座石鉱泉に向かうが、かなり時間がかかった。バスを降りると雪があった、いよいよ登り始める。
 休憩の後いよいよ出発、僕がトップで急登を始めた。新しいザックは紫色なんだけれども、僕だけだろうと思っていると、なんと高木さんまでオニューでオマケに紫色ときている。せっかく一人だけと思っていたのに残念だ。
 ゆっくり登れと言う声に戸惑いながら登る。トップは初めてだ、隊のペースはトップにかかっているなんて一人でニヤニヤしながら後ろを振り返ると大分離れてしまっている。雪がほとんどない登りは快適だ。後を見るとまた、離れてしまう、こんなことを何度も繰り返していた。道も雪が混じるようになるとスリルが加わる。まあ下りと違って登りの方が僕は好きだから、地面に足をベッタリとつけるようにして一歩一歩進める。それでも、滑ったり転んだりしている人の続出だ。
 燕頭山を過ぎると後はダラダラという話なので、僕は燕頭山を目標にセッセと登る。遠く富士山が見えるとやっぱりきれいだなあと感心する。甲斐駒は雪が全然ない。
 昼の大休止で昼食となったが、僕はザックを背負子にくくり付けてあるので取るのが面倒なので他の人から分けていただく。
 再び歩き出した時の調子の崩れはひどく、今まで何とも思っていなかった荷物の重みがモロにかかってきた。かなりのハイペースのためか調子が落ちた気がする。とにかく燕頭山を目指して行くしかない。13時近くに山頂到着。樹林帯の中のため展望は良くないが、一寸開けた所から日が射している。
 崩れた調子を元に戻したかったのでペースを考えて歩く、ひたすら樹林帯を歩いている。高木さんの話だと、明日稜線に出るということだが、天気が悪いと何をしに来たのだかわからなくなるそうだ。僕は明日天気が悪かったらオベリスクで「バカヤロー」なんて叫んでやろうかと考えてみる。時計はまだ早いというのに樹林帯の中は夕方の雰囲気である。
 ガラ場を渡っている時、振り返って見ると何と驚いたことに、古矢さんのザックは彼女の体よりも大きそうなのだ。「そうとう重いんだろうなー」なんて思って、自分のは減らないけれど古矢さんのは食糧だからそのうちに軽くなるさ、なんて思ってみる。僕は富士山以来よくテントを担がされる。まさに「テント担ぎの青春」である。
 鳳凰小屋近くになるとオベリスクの頭がちらりと見える。小屋はダラダラ坂の終点にある、今夜の幕場だ。カマ天、ウィンパー、エスパースと三つのテントが出来上がる。
 食事はカマ天とウィンパーに分れ、エスパースにいる4人は2人ずつの配置で分れ、カマ天には山本さん、鈴木(嶽)さんが来て食事を共にする。
 山本さんは登りの時から調子が悪そうだったけれど、食欲もあまりないようで御飯も残したり、アルコールもあまり飲まないし、心配する。9時ごろシュラフの中に入ったけれども、ウィンパーの方はまだ話が弾んでいるようだった。
 第2日目、朝3時眠りの真っ最中に起こされる、山で辛いのが起きる時と下山の時だ。朝からトラブルが発生した。二つのピークワンが故障だ、自分も持っているのでちょこちょこいじってはみたもののお手上げだ。
 ホエーブスを貸してもらう。今日の朝食は雑煮である。食事が済んで撤収にかかる。何と隣のパーティは男女2対2だ、うらやましいなという感じで見てしまった。
 天気は最高で、稜線までの急登にファイトをかける。本日アイゼンを付けての歩行、ガシャガシャっと一歩一歩歩く。調子の良い僕はどんどん行ってしまい時々注意される、風が吹いて時々顔に当たる。稜線が見えてきた。青い空はあの鋸岳で見た時の色と同じだった。どこまでも続いている。
 「サイの河原」という冬山合宿にあまりふさわしくない所なのだが、ザックを置いて一本とる。オベリスクに行く人、写真を撮る人、くたびれた人と様々だ。
 オベリスクのところで第1合宿とトランシーバーで交信、植村さんの声が入ってきて全員の無事を確認しあう(でもみんな伊藤さんのことを心配していた)。
 観音岳へ行く道は雪のない所もあり、冬山のイメージとはずいぶんかけ離れたものだった。右手にはA隊の行っている白峰三山が見えている。北岳はあんなに雪があるのに、甲斐駒はなぜ雪がないのだろう?。
 次のトランシーバー交信を観音岳の頂上でやろうと思い、僕一人でスパートをかける。整っていた呼吸が乱れあえぎながら登る結構きつい登りだ。あの岩稜を越えれば頂上があるはずだと思った時、既に後5分しかなくその場で交信を開始した。後で聞いた話では、僕の声は聞こえたらしいのだがA隊の声は聞えなかった。
 トランシーバーをしまって待っていたらようやくみんながやって来た。そんなに速く歩いたのかと思ったが、調子のいい証拠だ。観音岳に到着。みんな写真を撮ったり、スケッチをしたり、バテたから休むといったり、色々やっている。
 それにしても中途半端な休みが多すぎるような気がするのだが、みんな休みたいのはわかるけれどビシッとキメたい。
 観音岳から薬師岳はもう下りだけなのだ。この道も雪がほとんどないような状態である。薬師岳を通過し鳳凰三山は制覇したことになる。道は更に薬師小屋まで一気に下り、また上ると下るといった道で、その下りもダラダラと下りるという感じであった。
 南御室小屋を過ぎると薄暗い樹林帯に入り、幾分の上りになる。辻山のピークの下をトラバース気味に進んでいる。樹林帯が突然消えるとポッカリと広がって山火事の跡に出る。ここで一本とる。
 景色はここで見納めということで写真を撮って出発する。樹林帯の中では皆さん無口で下を向いて歩いている。みんな色々考えて歩いているんだろうなあ「どうして俺の装備は減らないんだろうなー」とかね。
 杖立峠で最後の一本、夜叉神峠まで後わずかだ、スパートをかける、ダラダラ坂を駆け降りる。凍りついた道で転んだり、滑ったりの連続で夜叉神小屋に到着。ビールでカンパイ。テントでも張ろうかと用意を始めたら後続隊が到着。ずいぶん早かったねー。
 夕食の用意を始めるが、牧野さんと桑名さんの調子が悪そうだ。食事もそこそこにシュラフに入ってしまった。
 後の人達はトランプにしけこむ、コーヒーをかけてアメリカンページワンをやる、なかなか勝てそうで勝てない。そんな時、隣のテントから田原さんが来てお酒を飲みだした、ウィンパーの連中は寝てしまって相手がいなくなったらしい。でも、しばらくすると牧野さんも起き出しチビリチビリやりだす。
 トランプ組は田原さんの相手もせずに熱中しているので、彼は手持ち無沙汰でコックリコックリ始めてしまうしで、9時には全員シュラフに入ってしまった。
 第3日目、今日もいい天気だ、本日は40分の下降で、後は温泉にドボンで終了する。昨日の下降で転んでひどい目に合った人達やカシコイ人はアイゼンを付けていたが、テクニックが甘いね! でも面白いのは凍っている所はヨロヨロ歩かずサッサと行ってしまえば何のことはないのだ。アイゼンを付けていた増田さんはアイゼンを外した途端に転んでしまった。
 そんなことでスーパー林道へ無事に降りてきた、温泉へ行くためマイクロバスを待つ。芦安鉱泉に入ったのは9時過ぎ、朝風呂とは良いものでとても気分がいい。汗を流し、ビールでカンパイ!。
 初の合宿でカマ天を担ぎ、これからの合宿もテント要員になりそうで恐怖であるけれど、体の調子が絶好調だったのが今回の合宿を楽しいものにしてくれたと思う。もちろん天気や雪の少ないといった条件も大きなポイントだと思う。みんなで行くほど楽しくもありまた苦しいもので、励まし合い登るのが合宿だろうと思う。これからも、もっと楽しく思い出に残る合宿、いや山行を! 努力していきたいと思ってる次第です。参加の皆さん、どうもお疲れさまでした。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ247号目次