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男鹿山塊の黒滝山
川田 昭一

山行日 1983年3月5日~6日
メンバー (L)川田、国行、岡部、市川

 昼間の東北線の列車にゆられて出かける今回の山行は、男鹿山塊の一つ黒滝山(1754m)への初めての山行である。
 知らない山へ入る時、いつも思う、不安と期待が混じりながら黒磯駅より四人そろってタクシーに乗り込む。
 タクシーの運転手はもちろん、黒滝山なんて山は知らないとのこと、知っているのは麓の部落の名前だけ、そこへ続く道を車は走る。
 歩き始めが午後も3時過ぎ、土地の老人に取付点を聞いたおかげで、思ったより登山道ははっきりしており、途中北風がヤタラ強いヤセ尾根を通過し、日が暮れかかる5時30分頃、百村山ピークにベースを設けた。明日のアタックに期待をし、四人とも遅くまで語り合う。
 2日目、営林署が付けた標識板や、某大学のワンゲル部が付けた赤布を頼りに、雪のしまり具合を靴底で探りながら、ヤブの少ない所を選んでの登山となる。
 枝尾根が交わるジャンクション・ピークでは必ず直角にルートが折れ、ルートファインディングを難しくしている。  しかし、冬のコメツガ、ブナ、ミズナラの原生林が美しく、久々の山らしい山に入山して嬉しくなる。
 ブナやミズナラの葉を落とした木々を通して見上げる黒滝山の頂上は、はるかに遠い。百村山のベースをカラ身で出発してから4時間30分、ピッチにして4ピッチ目、やっと黒滝山のピークの所在を示す、そまつなブリキ板を見つけ、四人そろって歓声を上げる。
 天候は申し分なく、手頃な木に登り大佐飛山のはるかに遠いピークを眺める。白い雪に覆われた大佐飛山はこの男鹿山塊の最高峰に恥じない山の大きさを持って鎮座している。
 苦労して登りつめたヤブ山(黒滝山)に最敬礼して、我々四人は、はやしながら下り始める。太陽のヌクモリで雪の状態が悪くなり、より辛い。転んだり、滑ったり、ヤブに突っ込んだりしながら、見る見る麓の視界がはっきりしてくる。点と線がはっきり家並みに、森と川と橋となって見えてくる。麓の部落、本田にはピークより3時間で下れた。
 梅のつぼみも未だ十分でない部落を抜けて黒磯行きのバス停に向った。


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