佐藤 朋子
都岳連遭難対策委員会主催の冬山救助講習会が2月24日、岸記念体育館で机上、27日、谷川岳の登山指導センター近くで実技、と分けて行われた。
実技内容は次の通りです。
- 雪洞ビバーク
初めは各自勝手に掘ったところ縦穴が多かった。指導者の指摘から木の根を利用した縦穴や雪庇を利用した横穴式が有効とのこと。今度は雪庇を利用した横穴に挑戦。ピッケル、メットを利用し、体を横たえるくらいの穴を掘る。穴は上に向って掘り、入口は小さくし雪が積もって穴がふさがらないように、外側へ下向きの傾斜をつける。換気には注意。外は吹雪だったが中に入ると暖かく風の音も聞こえない、快適だ。
- アンカー
- ピッケル
ピッケルにブローブヒッチでザイルを結び、50cmぐらい掘り下げた溝に埋め込む。溝が浅いとすぐ抜けるので注意。ザイルはピッケルより上に上がらないように溝を掘る。ピッケルに上向きの力がかかると抜け易くなる。ピッケルを埋め込んだら、雪を被せ、しっかり踏み固める。
- ザイル袋、テントポール、ザック等
袋の中に雪を詰め、真ん中にザイルを結び、ヒョウタン形にする。後はピッケルと同じ、回収不能な場所などでピッケルの代用に使える。
- デッドマン
雪面に対し、45度の角度で30cm以上埋め込む。ワイヤーロープがまっすぐ延びるよう、溝は深く掘る。デッドマンを使用する場合、弱層テストを行う。
- アイスボラード
残雪期やウィンドクラストの雪に有効。半径1mの円の周囲に幅15cm、深さ20~30cmくらいの溝を掘り、しっかり踏み固める。ここにザイルをかける。この場合もザイルに上向きの力がかからないように溝を掘ること。
- 搬出法
- スノーボート
収容の際はボートの固定と水平性に留意する。固定は同一固定点で流動分散方式をとる。搬送は6人でそれぞれの分担を守る。上り下りで力の配分が逆になるので注意。各自シュリンゲを肩掛けにして運ぶが、かなりの重量が肩にくるのでテープシュリンゲを使用したほうが楽だ。
- ツェルト、シート
負傷者を包み、7ヶ所ぐらいにカラビナや雪の塊を入れ、インクノットでシュリンゲをつける。後はスノーボートと同じ。
二人の山行で、一人が負傷した場合でもシートを利用すると比較的楽に運べる。
スノーボートよりも負傷者への振動も小さいし、搬送時のコントロールも楽で、軽く感じられる。
- 柴ソリ
軸木に添木を3~5本を結びつけ、負傷者をザイルで固定する。斜面を下る時でも、ある程度柔軟性があり搬送者も楽だ。しかし、樹林帯で適当な木が入手できる所でしか作れない。
- ゾンデレーン
雪崩による遭難者の捜索はゾンデ棒を使用して行う。ゾンデを刺した手応えで判断するので経験が必要だ。むやみに刺したのでは遭難者を傷つける恐れがある。雪量が多く、ゾンデ棒が達しない場合は探索壕を掘る。
- コンテ
搬出の時、下降で確保に当る人が滑落停止などに利用するものだが、ザイル操作が複雑だ。確保者、滑落者をはっきり決めておかないと利用できない。ザイルはイタリアンヒッチを用いた。
以上、概要をまとめたが詳しくは都岳連発行の「山岳救助技術・冬山編」を参考にして欲しい。
山での事故は起こしてはならない。しかし、もし起きてしまった場合、他人を当てにせず自分達で処理できるだけの知識と技術は身に付けておかなくてはならない。それが登山者のマナーだと思う。
私自身、1回の講習だけで修得できたとは思わない。今後、合宿などの機会がある度に練習し身に付けていきたいと思う。
参加者 片岡、赤松、佐藤(朋)