トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ248号目次

蓼科山スキー行
広瀬 昭男

山行日 1983年3月11日~13日
メンバー (L)広瀬、麻生、岡部、勝部(久)

 北八ヶ岳に魅せられて早くも10年になる。今回は蓼科山登頂後、山スキーで大河原峠からの大滑降を志して入山した。女性三名を連れての少々恐ろしい山行です。
 時間短縮しようとタクシーで女神茶屋へと向かう。久し振りにやって来たが何ら変わっていない。天気も良く、こんな重い荷物を背負って登るより、この辺りで山スキーで滑ろうかな、という話になり一寸心が動揺したが初志貫徹と思い予定通り決行。
 蓼科山への冬期入山者は少なく、今日もラッセルが続く。ルートファインディングで随分時間が取られてしまった。登路も急登で足取りはなかなかはかどらない。
 途中の平坦地で小休止。まだ体力に余力があるので、久美ちゃんと相撲をとって遊んだところ、力の強いことには驚いた。
 今日は頂上まで登る予定だったが、夜行の疲れも出てきてペースは落ちるばかり。予定を変更して約2千メートル地点で幕営する。そこは、どこにでもテントは張れるし雪崩の心配もない。
 すぐ近くにはスキーの練習に丁度良い斜面もあり、昼食後スキーで踏み均して我々のスキー場を作って滑りまくった。スキーはその人の性格が滑り方に顕著に現れてくるため、見ていると楽しい。
 A嬢、山スキーで滑るのは初めてとのこと、ゲレンデスキーのように滑れないからか、少しばかりイライラしています。山スキーとゲレンデスキーの相違点などを教えてあげる。
 K嬢、いつもガッツで山に登り、スキーも暴走族の気配あり。強い女性なのです。
 O嬢、斜面とにらめっこ。悩まずに一気に滑ってしまった方が上達するというのに・・・。人物批評はこの辺にして、そろそろ帰幕の時間となりました。
 色気より食い気?の女性三名と、アル中気味の男一名、楽しい夕食はフルコースです。
 さて翌日、頂上目指してラッセル開始。頂上付近の岩場は雪が多く所々凍っている。ワカンを履いていない岡部さん、腰まで潜って難渋しています。
 頂上小屋は半分程雪に埋もれて風雪に耐えている。頂上に着いた喜びも束の間で恐怖の下降路が待ち構えている。夏ならば将軍平まで20分程で下山できるが、冬には雪がついて急斜面となって、我々の装備では下山に少し無理だろうと判断した。私のワカンは古いためか紐は切れ、木は折れてしまう始末でした。
 下山路を巻いて行けるかどうか30メートル程下ってみると、何とか行けそうである。全員スキーで下ろうかとも考えたが、今一つ技量が欠けて危険を避けるため、それぞれスキー、ワカン、ツボ足に分けて下ることにする。頂上直下急斜面に加えて、デブリまで出てきて、上を見上げれば今にも崩れてきそうな状態だ。心もち穏やかでない、私はスキーなのでどんどん先に行ってしまうが、女性は新雪に足をとられてなかなか前進できず。しばらく行くとデブリはなくなり、今度はスキーを履いてラッセルとなる。ワカン組が苦労しているようなのでスキーを履かせる。滑っている時間より転んでいる時の方が長いようだが、雪の中に潜ってもがいているよりはましであろう。
 眼下に将軍平の小屋が見え隠れする。気は焦れども一向に辿り着かない。頂上より2時間くらいでやっと雪との戦いも終った。小屋の横で全員そろったところで小休止。
 ところが下山に時間をとられているうちに天候が吹雪となってしまった。この先予定通り進むか、エスケープするか迷ったが結局下山することにした。
 下山路は急斜面で幅が狭く新雪が積もって、数本のシュプールが残っている。荷物も背負っているのでゲレンデで滑るようなわけにはいかず、皆さん何回転んだことでしょう。今日の行程は一ノ鳥居までだ。先に下って天幕を設営することにする。疲労も加わって一人で雪踏み、天幕設営は難儀だ。一通り張り終える頃、女性たちも全員そろった。
 今夜は岡部さんの○○才誕生日。心優しい麻生さんがスノーケーキを作り、ローソクを立ててお祝いをした。今宵は無礼講だからたくさんお酒を飲んでもいいのだとばかり岡部さんにワインを注ぐが、女性のたしなみかあまり飲みませんでした。むしろ、リーダーの方が飲み過ぎたようだ。
 最終日、吹雪。朝食はウドンで、またまた食べられませんでした。3月ともなると気温が高いので湿雪が降る。スキーの滑りも悪く、全員一緒に滑って行くことができない。林道で岡部、勝部(久)の二名を随分長い間待った。
 やっとスキー場に到着。いつ来てもスキー場はカラフルだ。山スキー組は我々だけでした。ガスと降雪でスピード出せず、滑ることに悩んでいる人もいて、なかなか下に辿り着けない。
 リフト乗り場に到着。慣れない山スキーのためか、多少疲れも見えたので、これ以上滑らずタクシーを呼んで茅野駅へと向かった。
 予定通りのコースを滑れなかったのは残念であった。それでも冬の蓼科山山頂を踏むことができ、頂上直下のトラバースも無事に通過でき、メンバーにも恵まれ満足な山スキーでありました。

〈コース〉
3月11日 女神茶屋~2000m地点幕営
3月12日 幕場~頂上~将軍平~一ノ鳥居(幕営)
3月13日 幕場~蓼科スキー場


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ248号目次