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仁田元沢(足尾)
今村 信彦

山行日 1983年9月3日~4日
メンバー (L)今村、牧野、古矢、関谷、高橋(千)

 当初、田原氏と車で行く予定だったが、不参加となり電車に変更、同行者は女性のみ四人となり、うれしくもあるが不安と不満も無くもない。
 前日、高崎駅にて仮眠の後、両毛線一番電車に乗るが、新しくなった高崎駅は余りにも明るく、暑く、また蚊にも悩まされ一睡も出来ない始末。桐生で足尾線に乗り換え、通洞駅で下車、タクシーで赤倉へ行く。ここは目前に仁田元沢、松木谷、久蔵沢の合流点にある大きな堰堤があり、ダンプが行き交う車道を仁田元沢出合へと向う。この付近は荒涼とした、西部劇にでも出てきそうな風景だ。ここよりしばらくは仁田元沢の左岸沿いの車道を行く。地図上の大きな堰堤を越したと思われる地点より沢に下る。陽射しの強いゴーロを少し行くとまたも、大きな堰堤があり右岸より越える。この沢は大きな滝やむずかしいへつりが全くなく、沢登りを楽しむというより庚申山への一つのルートと考えたい。中流域まで荒々しい側壁が見られ、時たまある滝は3~4m、全く問題にならぬ程やさしい。皆それぞれ好みの所を選んで登る。前の人の足元だけを見て登った所をたどるのでは、つまらないしまた、自分でルートを判断する力はできない。核心部らしき所を過ぎると周辺に木々が目立つようになり、安らぎを感じる。
 この沢唯一の20m位の滝は、左岸より高巻いてしまう。そろそろ源流部に近づいたようだ。左岸より小沢の出合う標高1400m地点にて休憩。今日はまだ2時間ほどは行動したいところだが、昨日は眠っていない人が多く、少し休むとなかなか腰があがろうとしない。これから先、適当な場所があるとも限らず、今日の泊り場とする。設営後、たき火をする。濡れた身体には何よりもありがたい。午後より曇り、雲が低くたれこめ、今にも降り出しそうな天気になってきたが、暗くなる頃徐々に星が見られるようになる。
 9月4日、5時出発、快晴、早朝の水は冷たいものだが、ここは余り冷たくなく、目だけ開いて身体がまだ眠っている様子、だるいような、すっきりした気分ではない。あい変らず、ただ歩くだけで滝場らしい所もなく伏流となる。沢は少しもおもしろくなく、源頭部はすばらしい風景だ。庚申山直下は、けもの道が多くフンが至る所にあり、動物の臭いがする。たいしたヤブもなく庚申山に到着。樹木が茂り展望はない。後は登山道をたどるのみ、張りつめていた神経もゆるみがちだ。問題にしていなかった庚申山からの下りは、沢よりずっときびしい。鎖も有ったり無かったり、一寸したクライムダウンあり緊張する所もある。眼下に見えていた庚申山荘へは近いようでなかなか着かない。山荘より歩きやすい道となり、一ノ鳥居より車道となる。もうすっかり神経がゆるみ、つらい道程だが我が同行者は、今までになく話に花が咲き、うなだれ、うつむき、重い足取りで歩くわが身とは対照的である。銀山平の国民宿舎で当然のように風呂に入り、我々五人のみを乗せた送迎バスで通洞へ行く(風呂代250円バス代無料)。帰路は東武鉄道経由、太田より急行座席指定に乗り、ぜいたくする破目になるが、それでも国鉄より安い。あれ程あこがれていた仁田元沢も、もう二度と行こうとは思わない。しかし又、別ルートで他の季節に行きたいと思う。

〈コースタイム〉
9月3日 通洞駅(8:15) → 赤倉(8:25~8:30) → 仁田元沢出合(9:00~9:15) → 泊場(15:20)
9月4日 出発(5:00) → 庚申山(9:00~9:30) → 庚申山荘(11:35~12:00) → 一ノ鳥居(13:00) → 銀山平(13:30~14:30) → 通洞(15:00)

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