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桧洞丸集中山行
その1 モチコシ沢
吉岡 誠

山行日 1983年5月29日
メンバー (L)植村、佐藤(哲)、赤松、片岡、吉岡

 5月29日朝、ユーシンロッジ集合の約束で玄倉よりの自動車組3人と、大倉~塔ヶ岳~ユーシンのカモシカ組2人は、未明に予定通り合流し仮眠の後、自動車でモチコシ沢出合いへ向った。途中、同角沢出合いでザンザ洞へ向う柄目、佐藤両氏に会い、同角沢出合いに置く予定の自動車でユーシンに入ってもらうかわりに、モチコシ沢出合いまで送ってもらうことになり、仏岩トンネルで下車、ガレを下り10分程本流を遡り出合いに到着する。
 狭いゴルジュの先に圧倒的な60mの大滝がかかる。二段からなる大滝は、下段の滝は左右とも、上段は左より直登するがなかり手強い登りとなる。下段を赤松氏がトップで取り付く、忠実に水線横を登るが濡れてて意外に悪いようだ。なかなか中間支点がなく、後で聞いた話だが支点1本とるまでは大分緊張したとのこと。35m程登るとテラスがあるのでピッチを切った。
 いよいよ僕の番だが緊張感で体がかたくなっている。しかし、トップが確保してくれているので安心感もある。途中、支点でザイルのかけかえがうまく出来ず(ミッテルの形で登っているので上下のザイルのかけかえが必要)、トップにザイルを緩めてもらうのに大声を出しても、瀑流の音で消されて良く聞こえないらしく時間がかかったりしたが、ようやくテラスに出た時は全身ズブ濡れだった。
 僕以外の4人は岩の経験も充分なのでスピーディに登るが、僕はなかなかうまく出来ない。岩の習熟意外にこれを克服する法はないので仕方あるまい。
 上段は左のクラック沿いを洞穴に向けて直上するが完全なシャワークライムだ。植村さんがズブ濡れになりながらザイルを伸ばす。落口よりすぐ上に適当な確保点がないので、洞穴(2~3人が入れる)の中でピッチを切る。僕も2・3度スリップしそうになったが、何とか登り切り確保を交代したが飛沫でズブ濡れで歯をガチガチさせながらの確保で辛かった。
 60mF1に費やした時間は2時間。全員ズブ濡れだ。その後は5人でワイワイ言いながら、集合時間に間に合うように飛ばしに飛ばしまくった。途中で2頭の鹿に出会ったり、この沢の静かさと奥深さを感じ取ったりして楽しい行程だった。
 最後にF10の15mとF11の25mの上部の悪場を越えると沢は穏やかとなり、左の踏み跡に入りヤブを抜け、女郎小屋の頭とモチコシの頭の間の尾根に出た。尾根上も踏み跡が残るのみでスズ竹をかき分けながら進むが、途中に道が崩れている所をガレを登り直し東沢乗越に出る。小川谷林道への道を左に分け、右に同角尾根へ同角沢経由で約1時間。その後は、桧洞丸へ登りつめるのみだがほとんど眠っていない体にはアップダウンが非常にキツかった。完全な体力不足だ。
 桧洞丸直下で雨に降られ、4人に遅れ独りでフラフラになりながら登り切ると笑顔でみんなが迎えてくれた。でも、とても嬉しかった、仲間がいるってことが嬉しくて、ついオシャベリになってしまうようだ。今までバテてて口も聞けなかったくせに。

〈コースタイム〉
モチコシ沢出合(6:15) → 大滝上(8:20) → 同角尾根(11:50) → 桧洞丸(13:25)


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