トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ249号目次

鶏冠谷
岩崎 和人

山行日 1983年6月19日
メンバー (L)吉岡、岩崎

 6月18日、雨のぱらつく新宿を後にした。塩山でステーションビバークのはずだったが、タクシーで行く人たちがいたので同乗させてもらった。明け方近くに、急に雨が降ってきて不安にさせる。
 19日早朝、寒くてガタガタ震えながら出発する。出合までは西沢渓谷入口まで行き東沢登山道に入る。出合まで約45分である。出合で装備を身につける。
 ワラジでもかなり滑るため、安易に足は運べない、ナメの滝も慎重に登るが滑ってヒヤヒヤすることばかりだった。特にホールドのない滝で斜面のきついような所は、巻くようにして登る。巻き道に関しては、かなり踏み跡もはっきりした道になっていてわかりやすいが、ホールドとなるような木は腐っていたり、石も浮いているものが多い。
 僕は、ヘツリぎみの所で水流に足をとられ滝つぼにドボンと入ってしまったが、こんな小規模な滝の所でズブ濡れになっていたら先が思いやられると思った。
 後を向くと、かなり高くまで登ってるのがわかる。天候の方も良くなってきたようだ。「逆くの字の滝」はホールド、スタンスらしきものがまったくなく、あっさりと右側を巻いた。沢すじに戻ると、また滝が待っている。これは右側の壁のリッジぞいに登っていくが、ヌルヌルで危なっかしい。ちょっと無理するが右壁に上って、シュリンゲがぶら下がっているので、それにつかまろうとした時、吉岡さんが転落、水流をまるで滑り台を滑っていくように落ちていってしまった。少したって、彼の姿が現れ、大丈夫の合図を見てホッとする。
 シュリンゲをつかんだが次のシュリンゲがつかめない。迷っていると足元がツルッ!という感じで体がふわっとした。シュリンゲとゼルバンを結んでおいたため落ちずに済んだ。なんとか登り切って吉岡さんが登ってくるのを待つ。
 この先もナメの多い沢すじで、それにかなりジグザグがあるように思った。その中でサンショウウオか、イモリか、ヤモリか知らないが、始めこんな所に魚がいるぞ!なんて思っていたが、実は沢の住人は魚ではなかったのである。
 日当りのいい所で休憩、稜線へアタックする。ササがなくて楽だが傾斜がかなりきつく、ゼエゼエしてしまう。岩の上に土が少しあり、そこから木が生えている所があって、木を持ったらそのまま土も一緒にはがれてしまうという、危なっかしいツメである。
 稜線へ出ると、甲武信岳のピラミダルが目の中に入ってきた。「遠いなー」と思わず二人で言ってしまった。甲武信まで行くつもりであったからである。あまりの遠さにア然としてしまい、甲武信岳はまたの機会にということになった。
 沢をつめた後のピークハントは、快感であるがあまりにも遠すぎたという気持ちだ。眺めのいい岩峰で休憩をする。
 ここから鶏冠尾根の下降が始まるワケだ。以前、中村さんがこの尾根を下っているので色々聞いていたが、迷い道がたくさんあるらしい。注意して行くが最初は、迷うような道もなく、はっきりしている。鶏冠みたいにギザギザに見えるからこの名前がついていると思うが、あまりアップダウンの差はきつくなく、岩峰は巻いているものが多いようだ。第一岩峰と呼ぶ所で17メートルのアプザイレンで下降する。支点はボルトが1本あるだけで、横にある木はグラグラで危ない。
 この岩峰を降りた所ぐらいから迷い道が時々発生する。目印がちゃんとあるので確認しながら行ける。太い道、細い道、こういう場合、細い道が正規のルートだったりする。目印がなくなりおかしいと思ったら戻ってみることだ。鶏冠尾根はそれらを注意すれば、下降するのは楽だと思う。
 尾根を降りると朝来た鶏冠谷の出合にくる。後は東沢山荘のバス停まで同じ道をたどる。出発が早かったので明るいうちに帰ることができた。

〈コースタイム〉
東沢山荘(4:30) → 鶏冠谷出合(5:16) → 二俣(7:08) → 稜線直下(8:02) → 鶏冠尾根(9:46) → 第一岩峰付近(11:44) → 鶏冠谷出合(14:20) → 東沢山荘(14:50)


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ249号目次