トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ250号目次

中央アルプス縦走
高橋 千恵子

山行日 1983年10月8日~10日
メンバー (L)広瀬、棚網、小泉、高橋(千)

 10月7日新宿発アルプス11号は、連休のためか立っている人と荷物とで車内は混雑している。ワンボックスに座れた私達4人は辰野駅で乗り換え、駒ヶ根に着いたのが8日の5時40分、駅前からは今日登る中央アルプスの峰々が見える。
 タクシーでしらび平まで向かい、千畳敷までロープウェイを利用し、一気に2611mの人となる。冬に来たことのある広瀬さんに、千畳敷で雪崩にあった話などを聞きながら、8時35分に登り始める。先程まで見えていた宝剣、駒ヶ岳の峰々にガスがかかり始め、僚船に出た時にはガスが濃くなり駒ヶ岳も見えなくなっていた。駒ヶ岳ピストンは諦め、道を急ぐことにする。宝剣山荘着9時15分、雨具は上衣だけを着る。ガスで視界がきかないのが幸いか、岩峰の宝剣岳に無事9時40分着。頂上は一人が立ってやっとの大きな岩だ。雨が降って滑り易くなっているが、小泉さんが挑戦。下からハラハラして見ているうちに岩登りの好きな彼女は平気な顔で登ってしまった。雨が強く降り出したので雨具上下をしっかり身につけて出発。ガスで前に何があるのかさっぱり分からず、そのまま岩を登り岩を下りしていると極楽平に着いた。10時30分。宝剣岳を登って来ると、ここは本当にホッとするほど平らな尾根で気持ちが休まるが、ガスと風雨で気持ちは沈んでいる。濁沢大峰を過ぎ風の当たらない場所で一本とる。11時。晴れていればルンルンの道だろうと残念に思い、西からの激しい風雨によろめきながら進む。時折ガスが切れ、わずかな景色に足を止め、この一瞬を見逃すまいと見入る。避難小屋を捜すがガスが濃く道が分からない。踏み跡を行ったら這松の中に入ってしまい、枝に四苦八苦してしまった。1時15分やっと避難小屋に着くことができた。1パーティが暖を取っていたが、その人達はこれから桧尾根を降りると言って出て行った。
 小屋は20人程入れる広さできちんと整理されている。濡れた服を着替え、今日は小屋泊りとなる。その後小屋の中は登山者で16、7人になった。早い夕食を済ませ6時消灯となる。
 夜中、風雨で小屋がきしむ音に何度も目を覚まし、テントを張っていたら今頃どうなっていたことか、暖かい小屋に寝ている幸せを思い9日の朝を迎えた。朝になっても雨は止まず風も激しい。こんな時、尾根を歩いたら飛ばされそうで恐い。空木岳への縦走は諦め今日は停滞と決める。停滞となるとトランプを持ってこなかったのが悔やまれるが、水を汲みに行ったり、天気図の書き方など教わっているうちに夕食の時間となる。今日の夕食は来る前から期待していた広瀬さんによる緑色のカレーと称する「ゲンキャウワンガイ」という外国産のカレーである。作り方をよく理解しないまま思う様に作ったら、ホワイトカレーになってしまった。しかしその味は美味か珍味か食べた人にしか分からないとしても、辛いカレーでした。
 10日、曇りのち晴れ、昨日停滞してよかった。目の前には空木岳、遠くに目をやれば南アルプス、八ヶ岳、奥秩父、北アルプスそして富士山と一望だ。登れなかった空木岳を何枚も写真に収め、今日は千畳敷まで引き返す。6時30分檜尾避難小屋を出発。ゆっくり歩く、途中岩登りの基本三点支持等を教わり道草をする。駒ヶ岳に登ってもよかったが、千畳敷から登ってくる観光客の多いのにうんざりし、極楽平から千畳敷ロープウェイに下った。まだ9時30分だというのに下りのロープウェイはもう混雑している。そんな中私たちは順調に駒ヶ根鉱泉へタクシーを走らせることができた。
 中央アルプスの紅葉は、緑と黄色の斑だ。その中に見た空木岳は雄大に見え、今度は空木岳に登ってみたいと思います。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ250号目次