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南アルプス南部縦走
川森 毅

山行日 1984年7月28日~31日
メンバー (L)川森、江村(真)、麻生

7月28日(土) 椹島着(8:30) → 発(9:00) → 赤石小屋着(13:00)(泊り)
7月29日(日) 赤石小屋発(4:40) → 赤石岳(7:20) → 百間平(9:30) → 百間洞(10:15~10:40) → 大沢岳(11:40) → 丸山岳(12:30) → 兎岳(14:20)(泊り)
7月30日(月) 兎岳発(4:50) → 聖岳(6:30~7:35) → 聖平(9:00) → 上河内岳(11:35~12:45) → 茶臼小屋分岐(13:50) → 茶臼岳(14:10) → 茶臼小屋(15:00)(泊り)
7月31日(火) 茶臼小屋発(4:45) → 横窪小屋(5:40) → ウソッコ沢小屋(6:25) → 大吊橋(7:40) → 畑薙(8:40)

麻生 光子

 台風6号が近づいて天気が悪くなりそうな気配を気にしながらも、27日の夜行に乗り井川線、リムジンバスを乗り継ぎながら椹島まで入る。歩き出して1時間もしないうちに雨が降り出した。赤石小屋までの今日の予定は、ただうっとうしい樹林帯の登りである。夜行の疲れもあり時々歩くのがイヤになるが、それでも少しずつ高度を稼ぎ、14時には赤石小屋に着いた。江村さんの持ってきたお酒をいただいて、三人とも早く眠りについた。
 2月29日、雨は上っているが厚い雨雲に覆われ、何時雨が降るのかと心配だが、それでも予定通り出発する。今日は赤石岳を越えて兎岳まで行く。今回の行程で一番長い1日になる。赤石岳の中腹辺りから太陽が見え隠れして、天気が回復しそうな気配だ。赤石岳を越えて避難小屋に降りると、またガスに巻かれ進行方向を見失うが、ガスの切れ間をぬって稜線を確認する。9時前には視界も広がり、後は荒川三山、赤石岳を振り返り、前は聖岳を目指して先に進む。台風はどこかへ行ってしまったのか天気は全く回復し、夏のジリジリした暑さが少しずつ体力を消耗していく。それでも風が時々吹いて汗ばんだ肌には心地よく登りやすい。大沢岳にはトカゲ人間一人と荷揚げをしている地元の仲間以外会う人もない。大沢岳から兎岳へ行くのは我々三人だけだった。兎岳への最後の登りは苦労する。その前から休むと居眠りがでてきた私は、もうダウン寸前のようだ。不思議と足だけは動いているからまだ登れるものの、江村さんとの距離はいつの間にか開いてしまう。川森さんが後から根気よくついてきてくれる。兎岳の避難小屋もその周囲も汚いのでテントを張ることにする。15時前に着いたのでズックに履き替えて、風通しの良い所に寝そべっていると、いつの間にか眠り込んでしまった。なにか最高の贅沢ができたような感じで、このまま時間が止まればよいと思った。夜はさすがに肌寒くなるが眠るには最適だ。昨夜の睡眠不足を取り戻す。
 7月30日、聖岳を越えて上河内まで頑張れば楽ができる。それを頼りに「今日は大丈夫かな?」と自分の体調を確かめてみる。聖岳は茶臼岳から入ってくる人も多く頂上は賑やかだ。聖岳への20分間のピストンは、富士山を眺めながらお花畑の散歩ができ、のんびりできる。聖平には沢も流れていて、思う存分水が使え、小屋もしっかりしていてきれいだ。顔を洗ったり40分程のんびりした後は、最後の登り上河内岳目指して歩き出す。途中に湿原があったり雷鳥の親子連れが散歩するのに出会ったり、のんびりゆっくり歩く。今日は川森氏が体調を崩し遅れがちになる。結局今回の山行で最後までペースを崩さずに歩けたのは江村さんだた一人だった。日頃の訓練の秘訣を聞いて、今度はその準備を整えてから、また大きな山行に参加しようと思う。最後のピーク茶臼岳はピストンにする。ここでもう登りも終りという安心感から、のんびり気分で大無間、小無間なる山を眺めたり、江村さんと川森さんの明日の予定を小耳にはさんでは、「ほんとにお風呂に入れてくれるのか」と思いつつ、また眠ってしまった。
 7月31日、暑くて、それでも風があるから涼しくて、日焼けを気にしながらも歩いた三日間が終わった。今日は帰るだけだが、風呂に入りたいという三人の強い願望がいつもと同じ早立ちをさせる。茶臼小屋から大吊橋の間は、つづら折りの急下降だったりで、だらだら長くて歩くのがイヤになってしまう。自己鍛錬しようとする人は別として、この道は下山路として使う方が好ましい。畑薙へ下り、畑薙第二ダムのバス停から歩いて3分くらいの所に県営赤石温泉がある。そこでゆっくり三日間の垢を落として、夏の南アルプス南部縦走が終了した。
 今回の縦走は天気にも恵まれ雷雨にも遇わず、雨降りは初日だけで済んだ。コースも人数が少ないのもあって、予定より各1時間近くも短縮できた。またリーダーである川森さんは、コースの概略を記憶しているのには感心させられた。誰もが敬遠しがちな夏の南アルプス縦走ではあったが、それなりに人気の少ない山の中で存分に遊び、楽しむことができました。是非他の人も自分の体力に自信があるうちに縦走してみてください。


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