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ナメラ沢、初溯行の感想
斉藤 昭

山行日 1984年6月2日~3日
メンバー (L)広瀬、斉藤、高橋(光)、小原

 先ず、初溯行についての感想を記す前に、当三峰山岳会入会について述べておきたい。
 私の山行歴はわずか1年であり、それも主として丹沢、奥多摩などが中心の言わば「ハイキング」程度であった。それも日帰り山行ばかりであった。1泊2日コースでも多少無理して日帰りとした山行もあった。山との出会いまでの20数年間の空白を埋めるように毎週末丹沢の峰々に挨拶して歩いた。最初は妻も一緒であったが昨年9月に子供ができてからは、単独で登るのが常となった。
 そんななかで、沢登り、岩登り、冬山と果てしなく山行の夢は広がり、単独での山行の限界と不安を感じた。そんなとき、ふと山岳会の入会案内書を取り寄せた中に「三峰山岳会」があったのである。当山岳会に入会した理由は、「生涯登山」を目標にかかげていたことによる。私のような体力的、年齢的にも先鋭的登山は期待出来ないが、山を自分なりに感ずる感性については若い人に負けないと自負するのも仲よくやっていけそうに思われたのである。
 さて、前置きが長くなったが、以上私のこれまでの山行歴からして、今回の「ナメラ沢」がいかに易しい沢であろうとも、どれだけ印象に残った山行であったかは筆舌に尽くしがたいものである。
 出発は夜9時新宿発であった。車中リーダーの広瀬氏にザイルの結び方を教わる。塩山からはタクシーで新地平まで入る。5分程沢沿いに歩いたところで幕営する。ここで先ず最初の教訓。幕営ではシュラフを持参するべし。私はザックを流用して寝るつもりだったのでシュラフは持参しなかった。地面からの冷たさは堪え難いとのことで、同行の高橋氏のシュラフカバーを借用する。確かに明け方は冷える。早朝テントの隙間から空を見上げるとまずまずの天気である。多少寝不足と前夜の飲みすぎでふらふらするがとにかく出発する。さあ、初めての沢登りだ。
 1時間ほどしてナメラ沢出合に達する。ワラジをつけるのも初めて、ゼルプストをつけるのも初めて、期待と不安を一杯背中に背負って出発する。ナメ滝を登り、沢沿いに辿る爽快さ、足下にはとてもうまい水がある。こんな素晴らしい山行もあるなんてと感じ始める頃には、昨夜の寝不足も二日酔いも汗とともに吹っ飛び、足が軽くなってどんどん先に体が進んでしまった。かくして、楽しみながら沢を辿った私たちは、ついに最後のツメまで来た。約1時間30分のヤブこぎと素晴らしい苔むした奥秩父特有の原生林を登りつめてついに破風山に到着した。ついにやったという満足感に浸る。
 その日は予定変更して、笹平避難小屋にて泊まる。夕飯は、高橋氏ご自慢のツナ&大根サラダに全員舌ヅツミをうつ。こんなうまい料理は山から下りては食べられなぬとばかりたっぷり食べさせていただく。ここで全員の唯一の嘆きは「アー、ビールがあったらなあ」・・・・。
 翌朝、充分な睡眠ののち元気に下山。温泉にて2日間の汗を流して帰路につく。
 最後に、終始全員を安全に導いてくれた広瀬リーダーに心から感謝をしたい。特に私にとっては、初めての沢登りだっただけに、十分にその楽しさを味わうことができたのもひとえにリーダーのご指導によるものと感謝している。


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