トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ251号目次

苦土川大沢左俣
勝部 辰朗

山行日 1984年7月21日~22日
メンバー (L)勝部(辰)、今村、中沢、古矢

 今年の1月、三斗小屋温泉から登った熊見曽根より見えた、雪でまっ白に化粧した雄大な三倉三山が印象的だった。あそこを歩いてみたいなとその時思った。ルートを考え、登山大系を調べているうちに苦土川大沢をつめて行こうと決めた。「関東周辺の沢」にもこの沢は記述されている。
 7月20日、新宿スバルビル前にて夜9時30分、中沢号に乗り込んだ四人は東北自動車道を那須インターで降りた(高速料金2900円)。深山ダムへと道をとり、深山湖の横を走り大沢に沿った林道と三斗小屋宿への道が分かれている三差路に2時頃車を停め、酒をなめて寝る。(「関東周辺の沢」では、三斗小屋方面への道はここらで通行止ゲートがあることになっているが、現在は三斗小屋宿跡まで車で入れる。井戸沢などやる時は便利だと思う。)
 7月21日、天気雨。温泉の魅力に弱い私は沢を中止しようと思ったが結局行くこととなった。大沢沿いの林道を進み橋を渡って登るうち、右へ堰堤工事用の小道へ分け入り沢に下りる。堰堤2本を越してゴーロを進むうち、西沢が左より流れ落ちてきた。実はこの時、これを西沢と思わずこれは1本手前の沢でまだ先だとばかり思い込んでいた。なおも進むうち大きな滝が現われた。西沢と出合うまでは滝はないはずと磁石を見ると、どうも西沢の流れる方向に進んでいる。間違って西沢に入り込んでしまったと思い引き返しにかかったが、途中で西沢出合いはもうとっくに過ぎたことに気付く。また登り直してさっきの12m滝へと戻り右側を登り更に進む。20mの滝が現われ、ガイドブックでは巻くことになっているが、面白そうだから直登する。右よりハーケンのある中段テラスへ登り確保体勢をとる。そこから左へ斜上して滝芯をシャワークライムで通過。上部小テラスでランニングビレイをし、ホールド、スタンスの小さな微妙な登りで抜ける。
 二俣までも面白い小滝が連続する。二俣で左俣へと入る。ここからは傾斜も非常にきつくなり、息つく暇もなく滝が現われ、緊張の連続でグイグイと稜線へと突き上げる。
 左俣は入口が大きなナメ滝になっていて、右端を登ったが上部がツルリで高度感もあり嫌らしい。今村さん、古矢さんの登った左側の方が良いだろう。ただし、ここも上部のホールドが割りと細かい。この上、18m滝や3段50mの滝も面白い。ホールドは多いが高度感がある。初心者同行の場合は二俣出合いより50m滝まではザイルを使用したい所で、ハーケンを持参した方が良いと思う。この沢、面白い滝がある割りに20mの滝以外はハーケンは見当たらない。入山者の数が少ないからだろうか。
 この沢は最上部のヤブの中まで飽きさせない沢だった。ヤブは低い笹ヤブだ。雨に降られ通しで寒かった。大倉山の一つ東の小ピークに突き上げた。ここに荷を置いて三倉山へピストンをする。道はあるがヤブが覆い被さっているあまり人が通らない稜線だ。
 三倉山は静かないいピークだった。天気が良ければ会津の山々、那須の山々と、素晴らしい展望が開けることだろう、残念だ。引き返して大峠へと向かう。
 この三倉三山は予想にたがわぬ素晴らしい山だ、一面のニッコウキスゲの大群落、高山植物が咲き乱れ、そして五葉の泉等々、すぐ下山してしまうのが惜しい。登山者は我々だけ。素晴らしい花の山を四人じめにして申し訳ない気分だった。「天気が良ければ・・・」というのは贅沢というものだ。峠沢で幕を張り、夜、中沢君持参の花火大会を楽しむ。
 7月22日、天気晴れ。峠沢で釣りを楽しむも、魚はいなかった(ということにしよう)。朝食のソーメンを食べて出発。三斗小屋を横目に車の置いてある大沢出合いへ下る。
 帰りに板室温泉に入る予定だったが、いっぱいだったのとここは入浴のみの客は扱わないとのこと、温泉ガイドブックに載っていた共同浴場も今は民宿となっていてない。仕方なく那須湯本まで車を走らせ入浴してホッとする。今回は久々のいい山旅だった。

〈コースタイム〉
7月21日 大沢出合(7:15) → 二俣(10:30) → 大倉山(14:20) → 三倉山(15:15) → 大倉山(16:00) → 大峠(17:40) → 峠沢(18:00)
7月22日 峠沢(9:00) → 三斗小屋温泉(9:50) → 大沢出合(11:50)

ルート図

大沢ルート図

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ251号目次