トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ251号目次

甲武信岳集中登山
その3 東沢ヌク沢左俣
勝部 辰朗

山行日 1984年7月15日
メンバー (L)勝部、加藤、小原、平尾

 7月14日夜、新宿駅に釜ノ沢隊、鶏冠谷隊と一緒に集合し、23時55分の列車に乗る。
 塩山より西沢渓谷入口の不動小屋までタクシーで入る(5千円くらい)。小屋前にて1時間ばかり仮眠をして出発。天気は曇り、今にも泣き出しそうな空で気勢を削がれる。
 近丸新道を登りヌク沢と出合った所で朝食にする。我々の後から2パーティが入谷してきて先行して行った。食後おもむろに出発。12mのナメ滝2本は、滝というより床といった感じ、二俣まで滝はあるものの記憶に残らない程のもので、あっという間に二俣に着く。ここから右上を見ると林道と立派な橋が見え、沢も工事で荒れて趣きを損ねる。ここで先行パーティを抜いて左俣へと進む。ゴルジュ帯(と言う程のものでない)を通過して左俣と出合う。水量は1対1くらい、入口のV字型に狭まった暗い右の沢へと入る。ここからが核心部となる。いくつも連続して滝が出てくるが容易に越えてどんどん進むうち、やけにダラダラ長い滝がある。トコトコ登り切った後「あっ、これが三段260m大滝の下段100mだったのか」とつぶやく。一寸拍子抜けする。
 小休止の後、中段80mを右側の水流際を登る。傾斜は割とあるもののホールドは大きく階段状になっていて不安はない。ただちょっとヌメる。上段はいつの間にか右端のルンゼに入り込んでしまい、いつの間にか登り切ってしまった。なんだか巻いてしまったような気分で損したみたいだ。
 この上のトヨ状50cm幅、40mの流れは本当に面白い。なにか人間が造った用水溝のようである。ここから先は谷も落ち着きを取り戻し、奥秩父らしい沢となり林相も変ってきたようだ。
 きれいな白い砂の大ガレを通過し、右に小さな岩峰を見て進むうち沢も終わり、小ガレを登って樹林帯へ。樹林帯の中は登山道と言っていい程の踏跡があり稜線へ抜ける。ガイドブックの溯行図にある二条のやっかいな風倒木は今はない。
 甲武信小屋に一番乗りをして、すぐ「モートー」と叫ぶと、下の方から真ノ沢隊の赤松君の「モートー」のコールが聞える。「あっ、いるいる、来てる」集中登山ならではの喜びの一瞬だった。

〈コースタイム〉
不動小屋(4:40) → 沢溯行開始点(5:25~6:00) → 二俣(6:40) → 三段大滝上部(8:00) → 稜線(9:20) → 甲武信小屋(9:45)

ルート図

ヌク沢ルート図

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ251号目次