トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ252号目次

正月合宿 B隊 常念岳
平尾 真一

山行日 1984年12月30日~1985年1月3日
メンバー (L)広瀬、高橋(千)、川田、伊藤、中沢、平尾、関谷、井筒、牧野

 12月30日、沢渡~徳沢
 初めての冬山合宿で期待と不安で胸が高鳴る。年末に雪がたくさん降ったようなのでちょっと心配である。夜行電車の疲れもあり、徳沢までは遠く感じ、肩も痛くなった。
 12月31日、徳沢~蝶ヶ岳
 長塀尾根の登りは意外に長く、まだまだかという感じである。やっと稜線に立ったが、ガスっていて期待していた穂高連峰が見えずがっかりする。おまけに風も出てきて寒くなってきた。大晦日ということで、夜はテントの中でたいへん盛上り、歌など出て楽しかった。シュラフに入ってからは、ウィンパーが風できしむ音を聞きながら(下界じゃ皆んなこたつに入って紅白歌合戦なんて見てるんだろうなあー)なんて寒さに震えながら考えていた。
 1月1日、蝶ヶ岳~常念岳手前のコル~常念岳をピストン
 朝、目が覚めると外が無気味なほど静かであった。テントから顔を出すと無風快晴である。ラッキー、テントからゴソゴソ這い出し、初めて夜が明けきらない常念岳と対面する。灰色の空間にドッシリと腰を下ろしたほの白く光る常念岳は、なかなか存在感のある大きな山であった。今日はあそこへ登るのだ。おせち料理を食べて出発する。左手は常に穂高岳、槍ヶ岳を見ながらの稜線歩きはなかなか楽しい。途中のコルでザックをデポして頂上をピストンした。意外なほど危険な所もなく頂上を踏むことができた。展望も最高であった。
 1月2日、常念岳手前のコル~明神養魚場
 今日も天気が良い。後は下山だけなので足どりも軽い。トランシーバーで穂高隊と連絡を取るが穂高の方は、ナダレなどで大変そうである。みんなで心配する。ガンバッテほしい。
 1月3日、明神養魚場~沢渡
 冬の上高地を散策する。入山の時と違って心に余裕があるのでゆっくり楽しむ。このとき初めて雪の結晶が見えるのに気が付いた。ザックに付いた雪の結晶はいつまでも溶けずにきれいだった。小雪がちらつき、白くかすむ静かな冬の上高地、とても気に入ってしまった。
 後は沢渡まで一生懸命歩く、特に釜トンネルを抜けてからは、頭に温泉とビールがちらつき大変であった。温泉ではカラオケと酒で盛上ったのは言うまでもない。
 次に山行全体の感想。今回は天候に恵まれ、リーダーを始め、経験豊かな先輩の人々が一緒であったため、意外なほどあっけなく登れてしまったという感じであった。こんな事を言うと申し訳ないが、一日ぐらい吹雪で停滞というのも経験してみたかったという気もする。又、トレースがなくて自分たちでラッセルをするというのも経験してみたかったと思う。実際にそうなったら大変だとは思うのだが・・・・。最後にリーダーをはじめ皆さん色々お世話になりました。有難うございました。


雪の常念岳より
広瀬 昭男

 今年も晴天にめぐまれた正月合宿を無事に終えることが出来た。パーティメンバーの固い結束の賜物でしょう。
 12月30日、雪
 松本駅で暫くの間仮眠をとった後、タクシーで沢渡へ向かう。冬の上高地は4年振りだ。釜トンネル等長いトンネル内は電灯がつけられて歩きやすかった。以前は懐電をつけて滑る足下に注意しつつ通り抜けたのである。また道路も整備され、山膚にくねくねと沿った道を長時間歩いたものだが、数多くのトンネルの開通により道路はほぼ直線的になって大幅な時間短縮が出来た。更に釜トンネル出口付近の雪崩の通り道も改修されて難なく通れた。昔は上高地への危険箇所の一つであったのだ。
 大正池ホテルで大休止、更に頑張って徳沢へ向かう。途中、明神館で穂高隊と出会う。美しい徳沢の雪景色。メンバーは少しバテ気味となる。
 12月31日、晴
 今日は最も辛い日である。朝からヘリコプターが明神岳近辺を飛び交い、また遭難だろうと話し合ったが正にその通りだった。
 徳沢から長塀山を経て蝶ヶ岳ヒュッテ幕場まで所要約7時間。地図の時間は少し少な目に記されていると思う。今日は大晦日、10時頃まで三峰常念隊主催の紅白歌合戦をくり広げた。
 昭和60年1月1日、快晴
 期待した御来光は他の山に隠れて時間がかかり過ぎてしまい、感動的な対面とはならなかった。浅間山の噴煙が真直ぐに立ち上がっている姿も美しかった。
 目指す常念岳はドッシリと落ちつきはらっている。槍・穂高連峰の稜線が白く輝いて見える。身も心も軽くなるが、荷物だけはまだまだ重い。またもや遭難らしくヘリコプターが飛び交っている。
 蝶槍と常念岳中間の樹林帯で良い幕場を見つけ場所を確保した。空身で常念岳までピストンする。登りは岩稜帯に少し雪がついている状態なので、アイゼンが大分丸まったようだ。13時30分頂上着。個人的には3度目にしてやっと登れたのだ。ワインで乾杯をしたかったが、テルモスの紅茶で我慢しよう。冬としては時間が少し遅れ気味なので早目に頂上を出発した。下りの方がアイゼンをひっかけ易いため慎重に下る。危険箇所を無事に越えると足も次第に軽やかになってくる。
 1月2日、晴
 予定では蝶ヶ岳までだが、条件が良いため行ける所まで行こうと思い、明神幕営と決める。蝶槍がそびえている。荷物は大分軽くなってきている。約1時間で蝶ヶ岳着。デポ品を回収してから長塀尾根を下山する。あれ程苦労して登った急登をスイスイと下れるこの楽しさ。最後の急斜面は大勢がかってに下ったため、トレースが入り乱れている。徳沢まで下るとホッと一安心だ。
 明神養魚場には、明神東稜での遭難で行方不明者のことがベニヤ板に記されていた。彼等もここで幕営したのだろうか・・・・。
 水が豊富だから今までのように雪から水を作る必要もなく、食事の用意があまりに早くできてしまい皆さん驚いていました。
 1月3日、雪
 早朝より(前穂頂上に幕営した)穂高隊とトランシーバーで交信する。シーバーの入り具合が悪く思うようにこちらの言うことが相手に伝わらない。交信内容から今後更にきびしい行動になりそうだ。天候も悪い。
 穂高奥宮で安全登山と三峰パーティ全員が無事下山出来るように願いをかけた。ウェストン碑を経由して沢渡へ戻った。
 下山届けを提出してタクシーで一路新島々へ。1日早い下山であったが、予定通り妙高温泉で汗を流して帰宅しました。

 合宿を無事に終えて思い返せばいろんな事があった。ラジオの具合が悪く、天気図をとるのに苦労した。性能の良いラジオを使用するべきである。天気図が記入出来ない者もいたが、冬山へ入山するからには必ず記入できるように勉強しておかねばならない。聞きづらいラジオで気象係には迷惑をかけてしまった。
 食当係には、買出しから袋詰までしてもらい大変感謝しております。軽くて凍らず栄養があり旨く、なおかつゴミがあまり出ないようにするということで検討したのである。結果としては、量を少な目にしたので残飯は全くなく(健康優良児が大勢いたことと味付けが良かったのが一因でしょう)、ゴミはきちんと処理したため普段の半分以下ですみました。しかし、事前の準備にはかなりの時間を要し、食当係には御苦労をかけました。最後に、この合宿を次の山行のステップにしてもらえれば幸いであります。

食事メニュー
12/30各自
三平汁、きのこおこわ
12/31三平汁残り、五目おこわ、漬物
ハンバーグと白菜の煮込み、ワカメと干柿のマヨネーズ和え、白アルファ米、年越ソバ、ゼリー
1/1雑煮(干エビ、干シイタケ、麩、ユズ、餅)、おとそ、おせち料理(黒豆、ごまめ、昆布、数の子、なます、ちょうぎ、蒲鉾、はぜ)
カレー、白アルファ米、ワカメとシラス干しのサラダ
1/2おせち残り、きのこおこわ、みそ汁、漬物
マーボ春雨、ちらし寿司、昆布煮付け、ホーレン草とベーコンのスープ、佃煮、ゼリー
1/3赤飯、みそ汁、漬物
温泉

※下山の目処が立ったので1/1から1/4、1/5の食料も振り当てたので、当初の予定より豪華になった。

コース略図

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ252号目次