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大洞川井戸沢
吉岡 誠

山行日 1984年10月27日~28日
メンバー (L)吉岡、鈴木(章)、中沢

 荒川の四大水系の一つである大洞川の本流に相当する井戸沢を溯行すべく出発したが結果は、支流の椹谷ホラノ貝窪をつめる結果となってしまった。
 井戸沢は真に秩父の谷を代表するかのように、深々とした樹林の中を静かに豊富な水量を落とす谷で、岩の苔むした様と紅葉とが重なり、何とも言い難い雰囲気を味わうことができた。悠々と流れる中に数多くの渕や釜を有し容易には水線通しに行けず自然、高巻き、へつりが主体の溯行となった。
 この谷には"キンチヂミ"という、男には何とも言えぬ名称を頂く悪場があるが、ザイルも使わず腰まで水に入ったのみで意外に容易に通過できた。章子さんの水泳姿?まで登場する場面もあったが、楽しい気分での谷歩きである。
 本流が一度伏流になる所で右岸より椹谷が出合うため、どちらが井戸沢かの判断に迷い、リーダーの私の権限で左の沢を選んだ結果、椹谷へ入り込み、井戸沢の溯行を断念することとなってしまった。
 椹谷に入った後も井戸沢との確定がつかめないため非常に不安であった。幸い悪場もなく大滝下の河原でビバークし、盛大なたき火で暖をとり、と言いたいところだがそれが上手にいかず、早々と眠り翌朝に備えた。
 翌朝、簡単な朝食をとり、大滝の高巻きより開始する。左側のルンゼをつめ、小尾根に登り落口に出る。私はこの滝を本流の25mの大滝と思いたかった!! でも、40mもあるのや!。やっぱり本流を間違えたか。ガクッ。大滝を越えるとナメ滝の連続となり、次第に高度を稼ぎ、約1時間のヤブこぎの後、何と飛竜山の頂上に出てしまった。将監峠に出るはずが、飛竜山に出てしまうとはリーダー失格ですね。
 休憩後は丹波への下山路のミサカ尾根を落葉を踏みしめながら、無事を喜びながら足を進めた。ルートは違っても思い切り秩父の良さ、静けさを十分に味わった山行だった。


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