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春山合宿
その3 剣岳・八ッ峰縦走
吉岡 誠

山行日 1985年5月4日
メンバー (L)吉岡、高橋(弘)

 剣岳集中のルートとして八ッ峰より本峰を目指した。結果は、時間切れで途中敗退だったが豪快な雪稜の登高は魅力一杯だった。
 アプローチは三ノ沢をとった。八ッ峰末端のⅠ峰直下に突き上げる急峻な沢で、稜線に出るには最短だがそれだけに雪崩が恐ろしいので、朝も明けない内に取り付かなければならない。午前3時15分B.C出発。デブリで台地状になった三ノ沢出合いに取り付く。後はひたすら沢を詰めるだけだ。一歩一歩がとても重い。弘道氏は快調そうに先行する。僕は毎度のことだが朝は吐き気がして調子が悪い。2人の間隔が開いてくる。
 周囲が明るくなってきた。振り返ると出合い近くのテントが小さく見える。3稜のテラスでビバークしていた連中が撤収している。忠実に沢を直上すればよいところを、誤って左上してしまったため、ルートを修正するのに時間をくって、最後を3稜側にエスケープしてⅠ峰の頭に到着。僕らの前後には3稜よりのパーティがいる。
 Ⅰ峰からは、いよいよ縦走の開始だ。行先に目をやると延々とナイフリッジが続いている。緊張感で身が引き締まる。Ⅰ峰の下降は細い岩稜から続く雪稜を下る。既に多くのパーティが通過しているので、トレースもバッチリあり、楽に通過する。先日八ッ峰をトレースした金子、湯谷パーティの話とは全然違う。続くⅡ峰は約20m程のアプザイレンでⅡ・Ⅲ峰のコルへ。末端よりの登高を避けたパーティが、このコルを目指して登ってくる。
 三ノ沢の登りでバテた僕らを尻目に、他のパーティが追い越して行く。バテた足取りでⅢ峰をトラバースし、Ⅳ峰を登り切り、再びアプザイレン、但しこの下降の支点は竹ペグとのことなので、支点にショックを与えないように下り、再び急登し八ッ峰の半分になるⅤ峰に到着する。
 Ⅴ・Ⅵのコルへの下降の順番を待つパーティで混雑しているので、僕らの番までの大休止。たまにはこんな無駄な時間の過ごし方も良いものだ。下を眺めれば我が三峰の長次郎谷パーティが行く。例の如く『モートー』のコールを送る。
 本隊が剣岳本峰に到着しても、我々は遠くⅤ峰の頭。弘道氏の都合や体調も考え(こちらが本音だ!!)て、本峰登頂を断念し、Ⅴ・Ⅵのコルより長次郎谷を下り、B.Cに帰着した。
 八ッ峰は、夏の岩稜歩きも有名だが、残雪期にこそその良さがあるようで、次回は断念した上半部と頂上に必ず足跡を残したいと思う。それにしても三ノ沢は魅力的だった。


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