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春山合宿
その5 剣・長次郎谷
山沢 由理
山行日 1985年5月4日
メンバー (L)植村、川又、伊藤、野田、山本、高橋(千)、牧野、冨岡、曾我、佐藤(八)、三原、本山、大久保、山沢

 5月4日、快晴、4時起床。八ッ峰、源次郎尾根、別山尾根の各パーティが出発した後の空いたカマ天で朝食を済ませ、時間が遅いせいか幾分楽な気持ちで、7時10分B.Cを後にした。その日長次郎雪渓を登ったのは14人。テント場からは初め東へ30分程道を辿り、やがて長次郎谷出合で右へ入って行く。谷を覗くとこの辺では先が大きく湾曲しているので見通しは利かない。写真などを見ると入口付近は両岸が迫っており、そのせいで日が射さず急峻な感じを受けるが、実際にはそれ程の感じもなく、むしろ谷の日陰の部分とその先の日の当る明るい部分とのコントラストが印象的であった。雪渓上は、トップの話では熊ノ岩までは完全にトレースがついていたということであったが、上部は雪崩の跡で所々中断されていたそうである。隊列の中程を行く私には、道はすっかり出来上がっているものと思われたが、長次郎谷を登り始めてから3分の2ぐらいたっただろうか、右手は八ッ峰の岩峰がいくつもうねっていた。それを過ぎて間もなく、熊ノ岩の下で3本目を取った。と、その時落石があり(実際には自分達の所までは届かなかったのだが)、初め落ちて来る方向がつかめずみんな右往左往した。収まってお互いの姿を確認してみると、手に手に食糧やザックを抱えての愉快な格好だった。長次郎のコルへはこの先左へ道を取ったと思う。11時20分コル着。ここで初めて長次郎谷を上から見たが、吸い込まれそうなぐらい谷底が深く遠かった。そして最後の登り1ピッチをザイルを固定して、ごぼう抜きで上がった。スイカの待っている頂上へは12時30分頃着いた。南には立山三山が折り重なるようにそびえ、東には鹿島槍や爺ヶ岳、針ノ木が顕著な姿を現わしていた。記念撮影の後、平蔵のコルまで降りて、そこからはお待ちかねのシリセード、高度差にして約800mをあっという間に転げ落ちてきた。雪に埋もれながらの滑りの味は、悦に入ったようでもあり雪にもて遊ばれたようでもあった。もう平らで殆ど滑れないような所までねばってシリセードをしようと皆の執拗な姿は"もう歩きたくない"と物語っているようであった。と思ったのは私だけかも知れないが。

〈コースタイム〉
B.C出発(7:10) → 長次郎谷出合(8:40~8:55) → 熊ノ岩下(9:55~10:00) → 長次郎のコル(11:20~11:50) → ピーク(12:25~13:20) → B.C着(15:30)


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