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大久保谷
岩崎 和人

山行日 1985年5月19日
メンバー (L)今村、野田、加藤、岩崎

 久々である、山は136日ぶりである。タバコに火を付けて待っていると、メンバーが集ってきた。
 西武秩父からタクシーで浦山まで行き、そこから少々歩き、工事の施設らしき所で快適なビバークをする。少し暖かいような気がしたけれどもやはり夜は寒かった。
 朝はすぐにきた。アクビをしながら林道を歩き、取付き点まで行く。谷はそれ程暗くなく、特有の陰湿さ暗さ、溯行者に与える打撃などは全くなかった。渓流足袋も本日は調子が良い。ただ、大きな滝は見るだけのもので、登攀要素を持っていない残念なことである。
 ここの谷の滝は岩質からか、水の作った天然の美形である。水が溝を掘っているのだ。山女魚の死体を発見。釣師がかなり入っているようで静かなくせして汚れた沢である。
 1ヶ所ある大高巻きは、一度大久保林道に出て沢筋へ戻るのだけども、林道が荒廃しているため林道を歩くのがシビアであった。その後は容易で快適であるがヨチヨチ進んで行った。
 「ミカワ」という処があり、出発前からメンバーの間で何ぞや? と話題であったが結局わからぬまま、どうやらその地点で3本の沢が合流しているので、そこでこの「ミカワ」という名があるのではないか? という仮説ができた。
 ミカワからはいよいよヤブの中を歩く。ヤブといっても踏跡はあったので安心した。時々猛烈なササヤブとなるが、今村リーダーや野田さんの絶妙なナビゲートでスムーズに進んで行く。
 1400m付近に伐採箇所があったが我々が進むのは違うルートである。前が猛烈かつダニのいそうなヤブなので、別のルートをとった(牛首というコルにつながるルートである)。牛首はコルである、反対側は川浦谷になっている。人がいないものと思っていたが二人も会ってしまう。道もこれからは楽である。途中展望台があり、緑一色の景色に私たちは吸い込まれそうになる。これはやはり勝利の喜びではないか。
 天目山の近くにある立派な避難小屋からは、快適な下りを一直線に日原のバス停へと向う。下降はわずか1時間半というところだけれども、本日の行動は12時間であったので、皆オーバーヒートぎみであったけれども、黄昏の一杯(ビールだよビール!)には、それを忘れてしまったようだった。

〈コースタイム〉
出発(5:00) → 出合(6:20) → 桃の木平の滝上部(7:20) → 無名の滝上部(8:00~8:15) → 鎌倉滝(9:30) → ミカワ(10:45~11:15) → 牛首(13:30~13:45) → 天目山避難小屋(16:05~16:15) → 東日原バス停(17:30)

大久保谷 溯行図


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