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白馬主稜事件捜索記録
捜索隊責任者 佐藤明

 昭和60年3月31日夕刻、3月26日より白馬主稜に入山中の植村以下2名のパーティが下山していない旨の連絡を受け、下記のような捜索、救助体制がとられ実施された。

捜索隊構成
 (CL)佐藤(明)、田原、吉岡、安田、勝部、江村(し)、小泉、以上7名、先発隊
 大塚、金子、川森、伊藤、中沢、以上5名、後発隊
現地捜索隊 計12名
現地本部 白馬村八方 ロッジ待夢里(タイムリイ)
東京本部 播磨会長宅

捜索隊行動記録
3月26日 植村、湯谷、千代田、入山。
3月31日16時、3名未帰着のため要注意の旨連絡。23時、明日正午をもって捜索隊の結成の旨連絡。
4月1日 12時、捜索隊結成。隊員を田原宅招集。
16時、大町警察署に民間ヘリでの捜索を依頼したが発見には至らず。
17時、捜索隊先発7名、田原氏の車で出発。
19時、捜索隊後発5名、中沢氏の車で出発。
21時、大町署にて情報入手、打合せ。
24時、現地本部着。捜索方法を協議。
3~4時、解散、就寝。
4月2日 6時起床。
7時30分、猿倉隊出発。大塚、金子、伊藤、江村、安田、5名。雪洞探索、主稜の積雪、雪崩の状況の把握のため。
8時、八方池山荘へ出発。佐藤1名。各捜索隊と本部間の連絡指揮のため。
11時、日本農林(株)のヘリ、フライト許可を受け、ヘリ隊松川ヘリポートへ出発。ヘリ隊、吉岡、川森、中沢、3名。白馬主稜を後続した弘前大パーティと接触し情報入手のため。
12時、ヘリ隊フライト開始。本部、勝部、田原、小泉、対外的交渉や連絡業務などを行う。
12時20分、不帰付近を縦走中の3名確認。食糧をヘリより投下、しかし失敗する。
13時30分、ヘリ隊3名帰着後、八方尾根へ登行開始。
15時15分、第三ケルンにてヘリ隊合流。
16時40分、全員、現地本部に帰着。
4月3日、栂池ベルグハウス、鹿島館、大町署に御礼をし帰京。

山岳共済への捜索費用請求内訳
捜索隊食糧、宿泊費、日当 計303,013円。
謝礼 大町署、ベルグハウス他 計7,900円。
交通費 計87,740円。
通信費、電話代 計31,190円。
器材費 トランシーバー、ユマール、スノーバーなどを購入 計95,300円。
ヘリコプター費 日本農林 計259,800円 東邦航空 計730,800円。
山岳共済請求合計 1,515,743円
この共済金は4月23日、大正海上火災保険(株)へ請求し、5月28日、1,398,836円支払われました。

 山岳遭難は当事者やその家族に精神的、経済的負担を強いるばかりではなく、捜索義務を負う全会員に対し過大ともいえる強制力を及ぼします。特に今回捜索隊員として協力した中には、やっとの思いで休暇を取得し(一方的に?)、後処理に苦慮した者もいるように、金銭では処理し切れない「仲間の社会的信用」にまで我々の「遊び上でのミス」が影響することを肝に命じておく必要があります。
 今回の原因究明とその解析を掘り進め、何かの再発防止対策をとる必要があるかと思われますが、これについては現在編集中の報告書の中で発表、実施する予定です。
 最後になりましたが、今回の事件で色々な方にお世話になりました。紙面を借りてお礼申し上げます。
ロッジ待夢里 小林様
大町警察署 山崎様、下坂様
ベルグハウス様
鹿島館 宮坂様
宮崎大学 井波様
弘前大学 平野様
東京白稜会様
山形YCC 佐藤様
八方池山荘 鈴木様

以上

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