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赤岳ショルダー右リッジと小同心
小泉 周子

山行日 1985年11月3日~4日
メンバー (L)小泉、甘楽

 冬にはまだ染まりきれぬ山は難しい。アイゼンは要るか? やっぱり山靴か? 経験の乏しい私はいつも人任せなので、尚更判断に困ってしまう。
 初日に赤岳の主稜を目的とし、日が沈むまでに戻れば・・・の気持ちで、昼近く行者を出発する。思えば女の子だけでテントを担いでの登攀は初めてで、ちょっぴり嬉しくなった。でも不安も大きかった、自分達だけの力で実行するのはこれまた初めてだったので、今までとはちょっと違った緊張もあった。
 文三郎からのトラバースの場所はやっぱり今イチはっきりしなかった(確か前回はここで敗退している)。適当な所でトラバース開始、この時も内心間違っていたらどうしよーの不安で一杯だった。"あれが主稜"と確かめ、目指す稜へトラバースするが、はっきり言って怖かった。主稜と思われる稜へ右ルンゼと思われる方より取付く。支点は打ってある。凹角だ。ここだ! よし!と取付くが、割と手強い。おまけにモレツに脆い。右が駄目で左から手をかけるが、急に右手もホールドの一面が崩れ、ヒザと足の親指に当り涙が流れそうになる。結局正面より取付き、20~30m程でピッチを切る。IVはあったかな、それよりボロ岩の方が嫌いだった。それからはIIIピッチが1本。緩やかな岩稜と続く。しかし、主稜の何処か全く検討がつかなかった。後はII級、III級程のピッチが2~3本で上部は左からくる稜と合流する。最後の岩稜をコンテで登りながら、さあー、ここを飛び出したら山頂だ!、小屋があるぞ、と思い込んで頭を出した。だがそこには何もなかった。山頂小屋は何故か右隣のピークにある。ヤヤ!ここはショルダーだ。ショックだった、すごく悔しかった。信じられない、じゃー今来たのは何なんだブチブチ文句を言いながら下山した。テントの中でヤケ酒を飲みながら分かったことは、我々はショルダー右リッジを登ったのだ。あーあー又ルートファインディングを間違った。どうして違ったのか未だに不明、ただ我々の取付いた右ルンゼは左ルンゼで隣の稜が主稜だったんだ反省!。
 その日はヤケ酒をたしなみ日は暮れた。下山日、小同心クラックへ行く。中山峠を越えて大同心稜をアプローチとする。大同心基部よりのトラバースは思ったよりイヤラシクないが、ガレの所でちょっと迷ったが、下の方に踏跡を見つけて取付きへ出る。そこはピンが無く岩を支点とする。ほぼ40mでピッチを切る。風が強く確保する手が震える。もう寒くて歯もガチガチ。2P目は廿楽さんに挑戦してもらう、初めてのトップだがスタンス、ホールドもガッチリ。ピンも結構打ってあるので頑張ってもらった。両ピッチともIII+位だった。2P目も40mで切れ小同心の頭に呆気なく着いた。
 登攀そのものは物足りなさもあったが、精神的には今迄とは違った満足感があった。希望を言わせてもらえば、もう少し程度の高いルートを今度は行ってみたい。不安と怖さはすごくあるけど・・・。

〈コースタイム〉
3日 行者小屋発(11:00) → 文三郎よりトラバース(12:00) → 取付き(13:00) → ショルダー(16:00~16:30) → 行者小屋着(17:00)
4日 行者小屋発(6:30) → 赤岳鉱泉(6:50~7:00) → 小同心取付き(8:30~9:00) → 小同心の頭(9:50~10:00) → 行者小屋着(11:25)

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