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一ノ倉沢中央稜
金子 隆雄

山行日 1985年12月14日~15日
メンバー (L)金子、湯谷

 12月14日~15日で間近かに迫った正月合宿滝谷のトレーニングのため一ノ倉へと出かけた。パートナーは湯谷、目指すは中央稜だ。13日の夜、南稜フランケダイレクトを登るという田中、横浜蝸牛の加藤さんと一緒に上野を出発した。
 14日、早朝土合駅に着いてすぐに歩き始める。一ノ倉の出合いまではラッセルもなく快調に歩けた。出合いの避難小屋に余分な荷物をデポし、身支度を整えて小屋を出る。沢は完全には埋まっておらず、所々に水が流れていたりする。ヒョングリの滝も直登は不可能で夏と同じように高捲くが、この高捲きがけっこう悪い。先行している同志会パーティのザイルを借りて懸垂で沢に降りる。テールリッジも雪の付きかたが悪く、末端からは登れず衝立スラブをラッセルしていき途中からテールリッジに取付く。同志会の2パーティ4人が同じ中央稜へ行くので約2時間の順番待ちとなった。待っている間にも後続のパーティが来て同じく中央稜へ行くらしく、中央稜の基部は雛壇のようになった。
 我々の順番がきたのでジャンケンでどちらが先に登るか決める。金子、湯谷の順で行くことになった。1ピッチ目、傾斜はそれほどでないが、だいぶ上へ行くまで残置ピトンが見つからない。どこかにあるはずだが雪に隠れて見つからないため、20mほどランニングビレイなしで登る。ビレイポイントのテラスへの抜け口が少々やっかいでA0を使う。
 2ピッチ目は奥壁側に大きく廻り込み階段状の岩を登るとビレイポイントに着く。ここからカンテを右に廻り込んで衝立側のフェースに移り、フェースからチムニーを登るルートもあるが、我々は真っ直ぐ登ることにする。
 3ピッチ目は出だしが2mくらい垂直でアイゼン、手袋では少々厳しくA0を使う。その後右上ぎみにホールドの豊富な岩を登っていくとやがて右側の壁に頭を押さえられるようになり、這うようにして抜けるとビレーポイントに着く。
 4ピッチ目はA1の人工でそれほど難しくは見えない。ピンの間隔もそれほど遠くはない。でもなぜか苦労させられたピッチだった。このピッチを終了するとチムニーの上にでて右からのフェースを登るルートと合流する。
 5ピッチ目は草付きをヒョイヒョイと登りピナクルの下でピッチを切る。ここまで各ピッチでの待ち時間がだいぶあり、そろそろ日が暮れかかってきている。湯谷が6ピッチ目を登ったが先がつかえており、1時間近く待ったが一向に進まないのでザイルを固定して降り、ビバークすることにした。辺りは既に真っ暗である。
 ピナクルの裏に廻り、そこの雪を落とすと二人がどうにか座れるくらいのスペースができたのでツェルトを被ってビバーク体制に入る。横になると体が半分は空中に出てしまうので座ったままのビバークとなる。20時ごろから雪になり一ノ倉には一晩中雪崩の音が響き渡っていた。同志会のパーティは21時ごろまで行動していたようだ。
 翌朝は7時ごろから行動開始。相変わらず雪崩が頻発している。6ピッチ目、右から壁が覆い被さり登りづらい所を抜けてすぐにピッチを切る。次の7ピッチ目がこのルート中最もいやだった所だ。すっきり過ぎる凹角でアイゼンがひっかからずアブミが欲しいところだが生憎アブミはザックの奥深くしまってあるので、仕方なくアイゼンをガリガリいわせながら登る。この後は草付きを2ピッチ登るとガリーの左へ出る。草付きは結構雪が多く、雪壁になっていたり凍っていたりで気が抜けない。
 ラストピッチは右へ少し下ってからガリーを登る。12時30分衝立ノ頭へ飛び出て終了。
 下降は中央稜を懸垂を繰り返して基部まで。昨夜の雪でテールリッジの状態もだいぶ良くなり末端まで下れるようになっていた。沢の状態も良く、沢通しに出合いまで下ることができた。
 天候に恵まれたせいか、二日がかりではあったがなんとか登りきることができてよかった。これで滝谷もなんとかなりそうだと思った。(現実はそんなに甘くはなかったけれども)


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