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仙丈岳
山沢 由理

山行日 1985年10月12日~13日
メンバー (L)山沢、牧野、中村(恭)、関谷

 10月12日、夜行列車で降りた伊那北駅からそのままタクシーで戸台まで入った。ルートの研究不足から誤って少し手前で降りてしまい、また同じタクシーに乗り直すという無駄をした。橋本山荘の軒下を借りて朝食をとり、7時というやや遅い出発となった。初めは平坦な河原歩き、と言っても流れは見えなく、しばらくして不規則に流れる浅瀬に気付いた。渡渉を繰り返していくうちに、ルートは次第に巨岩をぬうようにして取るようになる。この頃になると始めなかった指導標も出てきて、ペンキで導かれるようになる。山荘の人に荒れていると止められたが、大岩がゴロゴロしているので荒れているようでもあり、しかし進むことは容易にできた。今日は地図を手に手に持って検討しながらの山行となった。試みは良かったと思うが結果的には、現在地点や尾根、沢筋など地図の上で確認を得ることはできなかった。遊びながら行ったこともあって、丹渓山荘に着いたのは10時45分。ここから丹渓新道と北沢峠へ行く道とに分かれる。丹渓新道を行くのが最初からの計画であった。しかし目的の馬ノ背ヒュッテ、もしくは仙丈小屋の幕営地まで6時間。とても行き着くとは思えなかったが、このルートは私達しか入っていなく、一張くらいこの先の樹林帯の中でどうにでも張れるということ、更にはこのまま静かな山歩きを続けたいという思いから、全員一致で予定のコースを進んだ。「どうにかなるだろう」というのが、この時の支配的な考え方だった。ここからが長い長い樹林の急登で今回の核心部である。途中どの位登ってからだろうか、樹林通しに甲斐駒を見た。きれいだった。明日はこれを何の遮るものもなく見ることができるのだと思った。(明日は何も見えない一日になるとも知らずに)行けども行けども単調なジグザグの登り。14時過ぎ頃から次第にガスと風が出てきた。15時50分格好の幕場を発見、迷わずそこに決めた。夕食を済ませた頃から雨が落ちてきて風も強まった。夜半には剣の合宿を思わせるような風となった。翌日の行程をどうしようか、稜線に出てピークを目指そうか、それとも下って林道を北沢峠に向かおうか、真剣に考えたら眠れなくなった。
 13日、6時40分出発。昨日心配した程の風でもなかったので、上に行くことにした。昨日テントを張った場所は稜線の直下だったらしく、まもなく上に出た。あたりは雨と風とガスで何も見えない。やはり下で感じる以上に上は良く風が通る。私は風に対して全く慣れていなかった。間もなくピークへ行かないで、このまま藪沢の分岐から下ることに決まった。馬ノ背を通過した時など風をまともに受けガスも濃く方向が分からなかったが、関谷さんにトップを行ってもらい藪沢の分岐を見つけた。その後は馬ノ背ヒュッテの避難小屋で休んでから北沢峠に降りてきた。
 今回初めて例会山行を持たせてもらったが、降って湧いたような反省材料はとても貴重だ。経験があればもっと楽に切り抜けられたのではないかと、今になって思い出される。


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