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四十八滝沢~コーモリ沢
金子 隆雄

山行日 1986年1月25日~26日
メンバー (L)金子、井上、月山、高橋(清)、鈴木(章)、小泉、本山

 1月25日、26日に四十八滝沢・コウモリ沢へ氷を登る目的で出かけたが、二日ともルートファインディングに失敗し悲惨な結果に終ってしまった。ほんとうはこの記録は書きたくないのだが、今後の教訓とするためにも恥を忍んで書くことにする。同行したメンバーの皆さん頼りないリーダーで申し訳ありませんでした。
 初日、都留市駅より宝鉱山行きのバスに乗り終点で下車。しばらく林道を歩いて三ッ峠への登山道へ入るのだが、最初のつまづきはここだった。登山道の入口には案内板があり、それを見たにも拘わらず違う沢の方へ進んでしまった。運良く山仕事に行く人が通ったので聞いてみたら全く違っていたので引き返す。ここで約1時間のロス。登山道をちょっと歩いて沢を一本横切ると次に出合う沢が四十八滝沢だ。我々はすぐ沢に降りたが、しばらく登山道を歩き堰堤を過ぎた辺りで沢へ降りる方が良い。
 登山道が沢を横切る辺りで二俣が現れる。どっちが本流か判らない。左俣を覗くと滝があったので、この滝を三段ノ滝と思い込み左へ進むことにした。ノーザイルで直登できる滝であるが初心者もいることだし、一応ザイルをだして登る。その後も簡単な滝を三つほど登ると沢は樹林の中へと消えている。ここで初めてルートを間違ったことに気付いた。戻って登り直すには時間的に無理なのでこのまま峠に向かって登ることにする。うんざりするような樹林の中を2時間ほど登ると、名前は判らないが三ッ峠から東側に派生している尾根上に出た。ダルマ石へ下りるには一度頂上まで登ってからでないと下れない。登らないでダルマ石まで行けたら楽だなと、良からぬ考えを起こしたのがそもそも間違いだった。頂上へ向かって歩きだすと、一人のハンターに出会った。彼の言うにはこの尾根を下っていけばダルマ石へ行けるという。それならそっちの方がいいやということになって下り始めた。平坦な尾根を行くと右へ下っている踏跡があったので、そちらへと下っていった。始めは踏跡もしっかりしていたがやがて不明瞭になり、ヤブコギとなる。岩場がでてきて懸垂で降りる。さきほどのハンターが下ってきて「こっちへ降りれば楽だよ」としつこく言う。適当に返事をしていると、そのうちに行ってしまった。「バカヤロー、テメーが変な道教えるからこういう目に遭うんだ」と自分のいいかげんさを棚に上げて内心思ったりした。もう辺りは暗くなっている。懐電をつけてしばらく行くとさきほどのハンター達が心配したのか我々を捜しに来た。彼達も道が良く判らないらしく、しきりと鉄砲を撃っては仲間と無線で連絡をとっている。やっと車道に出たら彼達はさっさと車で行ってしまった。我々は今何処にいるのかさっぱり判らない。車道を10分ほど歩くと、三ッ峠表登山道入口に出た。テニス場近くの林の中にテントを設営する。今日は散々な目に会ったが、明日に期待して寝ることにする。
 26日はコウモリ沢を登るつもりで幕営地を後にした。1時間ほどでダルマ石に着く。章子さんが体調が悪いんだかなんだか知らないが、行きたくないと言い出したのでここで別れて5人で行くことにする。休んでいる間にずいぶん大勢の人がやって来る。ほとんどのパーティが氷登りの装備である。この付近で氷のルートといえばコウモリ沢ぐらいしかない。今日は順番待ちで時間がかかるなあなどと余計な心配をしてしまった。ダルマ石の橋を渡りほんの少し登ると左へ山道が分かれている。左の山道へ入り、ルンゼを一本横切り、次に出合う沢がコウモリ沢のはずなのでこの沢に入る。ダルマ石からこの沢へと踏跡が続いている。ゴーロ状の河原をしばらく行くと滝が現れるはずだが、もう1時間以上も歩いているのに相変わらず平凡なゴーロが続いている。ルートを間違えたなと薄々気が付いていたが口には出さない。あんなに大勢の人間が入っているなら、誰かに会ってもよさそうなものだが、誰にも合わないし踏跡もなくなっている。単独行者が後からやって来た。彼もまたこの沢がコウモリ沢だと思っているらしい。やがて二俣となりやっと滝が現れた。左俣に15mぐらい、右俣には2~3mの三段ぐらいの滝がかかっている。単独の兄チャンは左を登ろうとしているが、我々は右へ行くことにする。その滝を越えるともう滝はない。これじゃ何しに来たかわからないので、側壁にかかっている短いが傾斜のある滝を2・3登る。それもすぐになくなりそのまま沢を詰めると、なんと屏風岩の真下の登山道に出た。
 どうも我々はマムシ沢に入ってしまったみたいだ。以上で終わりだが、ルートファインディングに失敗すると悲惨だという話でした。


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