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初めての山スキー 平標山
加藤 次男

山行日 1986年3月15日~16日
メンバー (L)吉岡、高橋(弘)、鈴木(章)、加藤

 腹の立つ。こんな表現が適切だ。
 3月14日夜、風邪のため不参加になった中沢氏の見送りで出発である。湯沢よりその中沢氏の車で、中沢号によく似たタクシーで浅貝スキー場までゆく。曇り空の下、午前7時40分未だリフトの動かぬ斜面を登る。なるほどシールのおかげで登ってゆける。いつもは何気なく見ているゲレンデも歩くとなると結構時間と体力を使うものである。ゲレンデに別れを告げいよいよ山の中へ入って行く。コースは平標山より南へ派生した稜線へつきあげる小尾根のそれである。小尾根上に乗った辺りから既に汗タラタラの中、早くも足のだるさを訴える。スキー板が重たいのだ。体力不足を反省する。弘道氏のトップで結構雪庇の張り出した尾根上を行く。目指す稜線はガスの中だ。途中少しの下りでシールの感覚がまだつかめぬ小生は前へつんのめる。すると踵がリリースされているので腕立て伏せの形で倒れ、情けないことに雪面と顔全体でキッスである。立ち上がるのがシンドイ。稜線直下辺りの樹林帯の急斜面で疲れを訴えていた右足がとうとう言うことを聞かなくなってしまった。そんな訳で幕場予定地を平標小屋でなしに、この小尾根を登り切った所とする。丁度昼頃だったので食事をとり、その後しばしのまどろみをむさぼる。
 16日朝4時30分起床。7時頃に出発。天気が良くなるような気配の中、平標山へ向かう。稜線上の雪はクラストしており昨日よりシールが良く効く。8時40分に平標小屋着。記念写真を撮った後300メートル程の高度を頑張るが、頂上直下で視界50メートル程のガスとなり頂上からのルート(群大ヒュッテ経由)を断念し、小屋へ戻りそこからの河内沢滑降に変更する。ここからが"腹の立つ"山行になる。プルークで方向づけをしてからパラレルにしてブレーキングしようとするのだが、足が揃うのと同時に体重が後に残りバタン。そしてこれが延々と林道まで続くのだ。弘道氏はウェーデルン、誠ちゃんはパラレル、章子さんはシュテム。小生は背中滑りに、腹滑り。情けないやらで自分に腹が立ってくる。ブッシュの中では小枝にザックを引っ掛けられてバタン。しまいにタメ息をついてしばし天を見上げる。好きでもない湿った重い雪と充分にたわむれて、ぬれネズミの如く林道に出、12時ちょうどにバス停に到着。
 楽しい山行、充実した山行と言うより、悲しいかなやはり"腹の立つ"山行と表現した方がふさわしい。いやいやあのような斜面を滑りきることは楽しいに違いない。だから必ずいつか滑りきってやりたいと思うのだ。
 他のメンバーに感謝すると共に弘道氏の言葉を山スキーを求める連中に贈りたい。"ゲレンデで転ぶようなスキーをしなくちゃダメ"これには付録があります。この山スキー山行の次週、服部氏に誘われてスキー納めという気持ちもあり天神平スキー場に行き、さっそくコブ斜面でチャレンジしたところ、前方一回転というハデな転び方をした。おまけに左ヒザ間接を痛めてしまい、この原稿を書いている今の気分は若干落ち込んでおります。


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