トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ259号目次

大洞川市ノ沢
牧野 美恵子

山行日 1986年6月7日~8日
メンバー (L)今村、鈴木(章)、溝手、川村、荒川、牧野

 今回の山行は中止かなと思いつつ小雨降る中、池袋へと向かう。章子さんと二人で今村さんに「中止ですか」と聞くと、返事は「どうして?」。やっぱりこの小雨位では行くのか。
 その夜はステーションホテル西武秩父にて仮眠。翌朝、三峰口駅まで行き、大洞ダムへの下降点までタクシーで入る。15分程で出合着。雨がまだパラついている。
 出合から少しで4m位の滝があったが、シャワーを浴びるにはチト早過ぎると全員パス。次の3mの滝では釣人が片手に竿を持ち、軽快に乗越していたので私達もと思ったが、早朝からシャワーをたっぷり浴び、一人は朝風呂にも入ったようだ。ナメとナメ滝が続く。釜を持った5mのナメ滝では私もお風呂に入ってしまった。水際にジャンプした途端に足元がツルリ。あれよあれよという間もなく胸まで水に浸かってしまった。余りあせってしまったので岩につかまるとか、浮くとかの動作がとっさに思い浮かばなかった。
 ここからしばらくは、日本庭園のモデルではないかと思える程沢が美しい。水流の白さと苔の深緑。こういう美しさをほんの一時でも占有できるということは何と優雅で贅沢なことだろうと思う。庭園の散歩が終ると、倒木帯が続きわずらわしい。
 また日本庭園の出現となるが、この沢は特長のある滝がないので遡行図だけでは現在地が全くわからない。今村さんが地図を出し、読図の講習会を開き現在地の予想をした。
 源頭で水の補給の後ツメに入ったが、ザレ場で一歩前進するたびに誰かしら「ラック!」と叫ぶほどワルイ。更に一時回復に向かった空模様だが、いまだに雨が降り続いている。この緊張を引きずって、雨の中ザレ場を詰めるよりはケモノ道を拾いながら稜線に出たほうが楽だろうとリーダーが判断され、ヤブの中へ分け入る。40分程のヤブこぎの後、廃道と化した登山道に出たがバテもした。そこから10分程の地点で幕営。15時30分。
 びしょぬれの体に熱いお茶が特においしかった。章子さん特製の色とりどりに盛った五目寿司をいただきながら「足でできること―足芸」を話題の中心として、テント内は盛り上っていった。今村さん所有のテントに所有主以外の五人が寝、リーダーという故か今村さんだけ雨でぬれているツェルトに行った。
 3時20分起床、簡単な朝食を済ませ、和名倉山頂めざし4時30分出発。15分位で踏み跡が消え、苔むした倒木をたくさんかかえて、さながら密林と思える地帯を30分程で抜け、山頂よりやや西側の開けた地点に出た。
 当初の予定では曲沢を下降ということであったが、リーダーよりこのメンバーでは自信が持てないとの爆弾宣言があり、ちょっと拍子抜け、でも私が足を引っ張ったのではと思うと肩身が狭い思いもしたが。
 結局二俣尾根を秩父湖めざして下りることになった。衣服が冷たいからと足早に降りる人。周りの景色や山そのものを味わいながら降りる人。それぞれの思いを抱きながら下降し、10時30分頃には秩父湖にかかる吊橋を歩いていた。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ259号目次