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雨の北八ヶ岳
野口 孝司

山行日 1986年6月29日
メンバー (L)原口、堀田、藤居、田保、野口、他2名

 6月の中旬、原口さんより北八ヶ岳に行かないかと誘いの話があった。聞いてみると熟年会員の皆さんに連絡をとった由、私は「岩つばめ」の仕事が残っていたので色よい返事はしなかったが、「岩つばめ」の原稿が編集委員の努力により速やかに集まったので馬力をかけ、6月22日に完成したので久し振りに行く決心をした。
 藤居さんに連絡をとったところ、堀田さんが夜行では疲れるので前日に茅野まで入らないかとの事で了承、藤居さんに列車と宿の手配をお願いした。
 6月28日、急行アルプスの指定席におさまったが、前日までの晴天続きの梅雨の中休みも終り、西日本から雨が降り出したと予報では告げていたが、途中は高曇りで鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳などが車窓から眺めて、明日の天気が晴れることを祈った。
 茅野駅前のステーションホテル(実はビジネスホテル)の個室に入り、夕食をすませてテレビ"巨人~広島戦"を見ていたら、後楽園では雨が降り出したとの事、こちらは未だ雨は降っていないが心配だ。その心配が明け方の3時頃になって、雨音に目を覚まして窓を明けたら大粒の雨が降っていた。この分では今日は蓼科温泉にでも行って、ゆっくり温泉気分でも味わってくるかと、蒲団にもぐりひと眠りする。
 6月29日、朝5時起床、身仕度をして5時30分駅に向かう。新宿発最終の鈍行が5時45分に到着、原口、田保、田原(田原氏の父親)、原田(田原氏の知人)の各氏が降りてきて、総勢7人となる。雨は降り続いているが、風は余りないので、とりあえずバスで日本ピラタス、ロープウェイ駅まで行くことにする。
 6時発のバスは我々7人だけで、約1時間の乗車でロープウェイ駅に着いたが、日曜日というのに扉は固く閉ざされたまま、バスの運転手さんは心配して駆け回ってくれたが、誰もいないので仕方がない、我々は雨をよけるため改築中の部屋に入り、バーナーでみそ汁とコーヒーをつくって持参のパンとおむすびで朝食にする。
 ロープウェイ8時発、こちらも客は我々7人だけ、乗務員に何処へ行くか知らないが雨が強いから気をつけて下さいよ、と慰められる。軽井沢の鬼の押出によく似た坪庭を通って北横岳へ向かうが、途中の北横岳ヒュッテは火災で焼け、家の土台だけが残っていて、ドラム缶などが焼けただれて放置されている。雨中の急登で横岳2472mに着く、横なぐりの雨の中、記念写真を撮り早々に双子池へ向かう。途中雨が止んだがガスで視界は全然利かず、濡れた巨岩がゴロゴロしている間を縫って、ひたすら下るだけ。
 途中天狗の露地に着いたのが11時30分、大分歩いたので此処で昼食にしようかと話が出たが、双子池まで20分位との事で、小休止もそこそこに出発する。道は相変わらず岩石の急降下で途中、田保さんがスリップしたり、堀田さんが腕にスリ傷を負ったりしたが、一番ダメージを受けたのが私で、雨が止んだので傘をすぼめて杖代わりにしたのが悪く、スリップした傘が枯草の中に突き刺さったため、運悪く身体が前のめりとなりザックの反動と共に岩に胸を強打してしまった。瞬間、息ができなくなり苦痛で顔がゆがんでしまった。心配した原口さんがすぐパテックスで胸を湿布してくれたり、カットバンで傷口を手当てしてくれたが、以後、苦痛との戦いであった。
 双子池で昼食となりビールで乾杯、持参の餅で「ぞうに」を作り食べている内に、又雨が降り出したので、早々に打ち切り、亀甲池に向け出発。途中一部登りがあるが大体は緩い下りである。しかし、前夜来の雨で道が雨水の流れ道となり、沢の中を歩いているのと同様である。靴の中はびしょ濡れ、身体は疲れ、心はただうつろに、黙々と歩いている内に飛び出した所が流源橋、やっとバスに乗れると思いきや、連休の表示を見てがっかり、仕方なくロープウェイ入口のバス停まで、重い足を引きずりながら、傷ついた身体をいたわりながら歩くことにする。バス停着17時10分。最終バスの17時18分に間に合い、茅野駅より特急あずさに乗車帰京しました。
 翌日、早速整形外科に行きレントゲンを撮ったところ骨折との事、絆創膏で胸を固定されシャツの上から幅広のサポーターで締め付けられてしまった。腕に力を入れたり、咳、クシャミ、深呼吸をしても痛み、その上カミサンにはグジュグジュ言われ参ってしまった。今夏は皆さんと北アルプス山行を予定していたが勿論中止、踏んだり蹴ったりとはこの事か。
 思うに、いくら長年の山歴があるとはいえ、歳はあらそえないものでやはり勘が衰えていることは確実である。予定では雨の場合は温泉につかって帰ってくるはずであったが、皆さん雨中でも歩く気概が充分なので、つい同行してしまったことと、私は最初から雨なので気分が乗らなかったのと、途中で雨が止んだので傘をザックに付けてしまえば杖代わりにしなかったこと(右膝を痛めていたので急坂の下降で利用してしまった)。など色々あるがなんといっても自分の不注意が最大の理由です。これを糧として完全に直してから、又皆さんと楽しい山行をしたいと願っております。皆さんに御迷惑と御心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

〈コースタイム〉
ロープウェイ駅発(8:10) → 北横岳(9:30) → 横岳(10:20~30) → 天狗の露地(11:30~40) → 双子池(12:10~13:00) → 亀甲池(14:00) → 大河原(15:00) → 流源橋(16:10) → バス停(17:10)

運賃
茅野駅~ロープウェイ駅 1400円
ロープウェイ 600円、荷物代 150円
ロープウェイバス停~茅野駅 1000円


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