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妙高~雨飾縦走(その2)
国分 加津子

山行日 1986年7月31日~8月3日
メンバー (L)今村、佐藤(明)、国分、牧野

 腰痛の心配をしながらも「いい所だよ」という言葉と「雨飾」という名前にひかれて行くことを決定。直前、地図を買ってサッと流し見ても縦走といえば大雪山のイメージが強い、私はあんなに次々と上り下りがある所とはうけとめられず、それよりも3日間の食事のことで出発まで頭がいっぱいの状態。前半は腰痛の心配、後半は歩き通せるかどうかの心配に変った今回の山行でした。
 第1日目、4人分というのに行動食を買いすぎ、分けてもらって持ってもらったものの皆んなのザックは満杯、食糧と酒に押しつぶされそうな山行の開始でした。とはいえ妙高への登りの時から見なれたモミジカラマツ、クルマユリ、ミヤマホツツジ、マイヅルソウ、ツマトリソウ、ゴザンタチバナなどが目を楽しませてくれ、「夏の山に来たな」という実感を味わせてくれました。明氏は夜のつまみにとフキとネマガリタケ採りにいそしみ、「長野駅は暑くて眠られなかった」と言う今村氏は調子が出ず、途中の風穴では穴の前に陣どって休憩。胃の調子が悪かった牧野さんも妙高山頂では岩に登ってみたり、私は私でウロウロと写真を撮ったり。スローペースで当初の予定地まで行けなかったものの、雪渓の近くにテントを張り1日目終了。「花火を見せびらかせない」と明氏くやしがる。
 第2日目、高山植物の勉強会で始まりました。サッサカ歩きたい明氏を尻目にチンタラ、チンタラ「この花何だったけな」。私としては初めて初めて見たのはキヌガサソウ、他はギンリョウソウ、オトギリソウ、イワカガミ、イワイチョウ、ワタスゲ、ハクサンコザクラ、ウサギギク、コバイケソウ、ヨツバシオガマ、シオガマギク、ミヤマオダマキ、ミヤマキンバイ、ミヤマキンポウゲ、シラタマノキ、コケモモ、アオノツガザクラなど、花の本を持ち歩かないと、なかなか知らない花の名前まで覚えられないと痛感。唯一、明氏が持ってきたパンフレットも牧野さんが木陰に消えた時と一緒に消えてしまったらしく「使ったんだろう」と憤慨すること。
 花の名前を思い出すことを楽しみながらの山歩きも、しかし、高谷池、天狗の庭から火打山までの事、火打を過ぎていよいよ人に会わなくなってくると、その登り下りにいささか辟易。口数も少なくなり、写真を撮る気力も薄れてやっとこさ焼山に着く。そして2日目の最終ラウンド泊岩への下り、と足元を見るとタカネツメクサ、でも鑑賞してなんかいられない。先頭の今村さんがロープを頼りに肩がらみで降りていく。そういえば岩登り訓練の時には練習したけど、Tシャツに短パンではイヤだと思っていると、明氏「つかまるだけでいいよ」。牧野さんの後から降りる。その下は足元から地すべりしていくような下り、「だから火山はキライだ」と内心十勝岳の下りを思い出しながら、やっと下に着く。あてにしていた泊岩や、キャンプ場は良くないとのことなので先の富士見峠に落着く。
 第3日目。2日間の疲れがドッと出たのか、朝から体の重いこと、富士見峠から先は植生がガラリと違うような感じで、それまでみなかったタチキボウシやニッコウキスゲ、ナデシコ、ハクサンフウロ、シナノキンバイ、ハクサンチドリ、ついにはトウヤクリンドウまでも現われたというのに、なかなか良い生徒になってくれた明氏に「これ何」と聞かれても張りのない返事しか返せない。春山合宿の時のように暑さでバテないようにと極力涼しい格好で歩いていたのに、かえって日焼けでほてってしまい熱っぽい。ついにだらしなくバテた。
 ヤブっぽいことが、こんな時はありがたく、上がらない足と体を日頃鍛えた腕で引っ張り上げ、エッチラ、オッチラやっとの思いで雨飾への分岐へたどり着く。と出た途端に人の声。何日も他の人に会わなかった錯覚に襲われる。「別世界だー」と見るとゾロゾロ楽しげなオバサンたちが通って行く。頂上までは10分位と聞き、荷物もなしということで思い腰を上げる。歩き出すとなかなか気持ちの良さそうな草原で、うれしそうに輪になり座っているグループもある。それを横目で見ながら最終目的地雨飾山に着く。頂上の直下あたりも花が多くヒメシャジン、ウルップソウなどの紫の花に混じって、らぶんあれはウスユキソウ。葉のすらっとしたミネウスユキソウもあった気がするけど違うかな。こんな所でウスユキソウに出合えるとは思ってなかったので感激。とはいえ記念写真の後は一人離れてゴロリと休養。
 後は梶山新湯へ向けての下り、もう降りるだけなのに、バテとつま先が痛いのとで、カニの横歩き風になってしまう。あまりの遅さに今村氏と明氏をいらだたせ、牧野さんにも心配をかけ、本人は情けなさでいっぱいで、そう思うとよけいにつまずいたり、すっ転んだり、でも梶山新湯に着いて靴を脱ぎ、ホッと一息ついたら嫌な事は忘れ、お風呂で牧野さんと洗濯、日焼けにしみると大声を出す元気さ、B型はありがたいと、この時思った。

付録(その一)
◎帰ってから調べてわかった花の名◎

付録(その二)
◎食事編◎


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